書評/新聞記事 検索  図書新聞は、毎週土曜日書店発売、定期購読も承ります
文学
出自の洗浄は私たちを幸せにするのか
書籍・作品名 : ブラッド・ロンダリング
著者・制作者名 : 吉川英梨  
mysterylover   40才   女性  





 誰にだって思い出したくない過去のひとつやふたつはあるものだ。さらには過去を消して、まったく別の自分に生まれ変わり、人生をやり直したい――一そんなふうに思ったこともあるのではないだろうか。
 警察小説が人気の吉川英梨さんの新刊『ブラッド・ロンダリング』では、新米刑事と女性刑事のコンビが、そうした現代人の欲望から起こる殺人事件の謎に迫っていく。
 都内のビルの駐車場の車に真っ逆さまに突き刺さったフリー記者の転落死の背景には、ひとつの集落を消滅させた大火事と加害者家族が背負った過酷な運命があった。昨年、話題となった『つけびの村』でも描かれた山口連続殺人放火事件を思わせる<真実>。過去を消して人生のやり直しに成功しても、結局、<ウソ>の人生は自分も周囲も傷つけてしまうのだと思うと切ない。
 一方、事件を追う男女の刑事にも、それぞれ消せない過去と消せない血があった。事件解決と同時に彼らも出自や過去を向き合わざるをえなくなるが、傷つきながらも選んだ道には希望を感じた。自らに正直にいようとするからこそ、前向きに生きられるのかもしれない。別人として人生をやり直すという「出自の洗浄」となる「ブラッド・ロンダリング」は、私たちを幸せには導かないのかもしれない。
 ネット上で匿名を使い、別人になったかのようにふるまえる時代となった。でも、現実の人生はなかなか変えられない。そんな今だからこそ、読んでほしい本だと思った。






サイト限定連載

図書新聞出版
  最新刊
『新宿センチメンタル・ジャーニー』
『山・自然探究――紀行・エッセイ・評論集』
『【新版】クリストとジャンヌ=クロード ライフ=ワークス=プロジェクト』
書店別 週間ベストセラーズ
■東京■東京堂書店様調べ
1位 流浪の月
(凪良ゆう)
2位 野垂れ死に
(元木昌彦)
3位 木になった亜沙
(今村夏子)
■新潟■萬松堂様調べ
1位 流浪の月
(凪良ゆう)
2位 五・一五事件
(小山俊樹)
3位 気がつけば、終着駅
(佐藤愛子)

取扱い書店企業概要プライバシーポリシー利用規約