学術
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濱口雄幸が示したもの
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書籍・作品名 : 濱口雄幸伝
著者・制作者名 : 今井清一
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敦賀昭夫
67才
男性
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今井清一『濱口雄幸伝』を読んだ。浜口雄幸ハマグチオサチ、高知県出身のただ一人の首相。谷間の村で育った、おとなしい子が昭和のはじめ、民政党の首相となり、極めて困難な時代状況の中で日本のかじ取りに命を賭けて「努力奮闘」した。
長い役人生活から首相、立身出世のお手本と見られがちだが、濱口の「努力奮闘」は目前の政治課題に懸命に取り組むという意味で、官僚的な意味でのえらいを飛び越えている。
濱口はもともと財政家である。積極財政の政友会に対し、緊縮財政を断行した。その考えは、国債を整理して、金本位制への復帰、国際社会での信用を回復すること、さらに税制を整理し、低所得者をはじめ、国民負担の軽減と物価引下げをはかることにあった。
またこの緊縮政策は外交、軍縮政策にも連動している。幣原喜重郎外相とともに、政党内閣として海軍の強硬な反対に粘り強く対応し、ロンドン海軍軍縮条約を締結した。さらに中国とも政友会の強硬外交ではなく、関税協定を結び、友好関係を回復した。
濱口で忘れてはなら荷のは、政党政治を確立しようとしたことである。濱口は有能な過料政治家ではなく、自ら国民道徳を身に着け、国民に信頼される政党政治家たらんとした。その姿勢が国民からライオン宰相の名で親しまれ、国民のあらゆる階層に支持された。
直後の濱口へのテロ、世界恐慌と軍部の台頭がなければ、濱口政治が継承されてアジア太平洋戦争は回避できたはずだ。濱口は様々な内外の勢力との緊張をはらんだ状況の中、国際協調の国へと日本を導いた。今日のすべての政治家に濱口の遺産を引き継いでと願わずにはいられない。
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