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評者◆小松崎健郎
「幻のAOR名盤」が再発!――デヴィッド・ロバーツ『オール・ドレスト・アップ』(VSCD‐3369)
オール・ドレスト・アップ
デヴィッド・ロバーツ
No.2892 ・ 2008年11月01日
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ここ数年の日本での洋楽潮流の一つだが、ファンのAORに対する回帰が顕著なものになりつつある。これはAORの再評価運動、もっと端的に言えばAORそのものの復権と捉えることも可能だろう。AORとはすなわちアダルト・オリエンテッド・ロック(Adult Oriented Rock)の略であり、1970年代後半から80年代中頃にかけて米国音楽界のメインストリームともなったジャンルの総称だ。その定義に関してはいささか曖昧なものの、それまでのティーンネイジャー向けのロックとは異なり、20代後半から30代までのアダルト層から熱狂的に支持されたサウンドのことを指す。キーワードとなるのは〝洗練されたサウンド作り〝であり、その多くは腕利きのスタジオ・ミュージシャンをバックに従えてのもので、1970年代前半の米音楽界で活躍したシンガー・ソングライターがAOR寄りにスタンスを移したもの、さらにはスタジオ技術を駆使して職人集団が作り上げたものまで実に多岐にわたる。サウンド面で言えば、それまでのウェスト・コースト・ロックの発展形としてのAORもあれば、ジャズやソウルなどを取り入れたものまで様々だが、とにかく徹底して〝都会向け〝の洗練された音にこだわったのが最大の特徴だ。代表アーティストを挙げるのであれば、ドナルド・フェイゲン、エアプレイ、ルパート・ホルムズ、レイ・ケネディといったあたりが日本では良く知られるところだが、たとえばボズ・スキャッグス、さらには(マイケル・マクドナルドが主導権を握ってからの)ドゥービー・ブラザースやTOTOといったバンドをその範疇に入れる場合もある。
そんななか、1982年にリリースされるや多くのAORファンを虜にした究極のマスターピースとも言うべきアルバムがある。それがデヴィッド・ロバーツの『オール・ドレスト・アップ』(ヴィヴィド・サウンド:VSCD‐3369)だ。TOTO、ジェイ・グレイドン、デヴィッド・フォスターといった米LAの一流ミュージシャンをバックに従えてのこの作品は、その都会的でポップなサウンドと流麗なメロディーもあいまって、当時のファンの間で絶賛されたばかりか輸入盤ショップでは軒並みベストセラーを記録したものだ。しかしその後、デヴィッド本人がバッド・イングリッシュやスターシップなどに曲を提供するいわゆる職業作曲家としての活動に軸を移し、またLPからCD時代へと移行してからはアルバムそのものが市場から姿を消してしまったことなどもあって、一部の良心的なAORファンの間でのみ聴き継がれるようなものになってしまったのである。 けれども冒頭述べたような動きもあって、『オール・ドレスト・アップ』は当時を知らない世代の間で〝幻のAOR名盤〝として騒がれるようになり、オリジナル盤は中古市場では超プレミア・アイテムとして高値で取引されるようになった。これを受けた日本のヴィヴィド・サウンドは同作をCDとして再発、大きな反響を巻き起こしたのである。そしてまた、この〝デヴィッド・ロバーツ人気〝の20数年ぶりの再燃は、思わぬ副産物をももたらしたのだ。日本に於けるAOR評論の第一人者である金澤寿和氏のコーディネイトにより、なんと26年ぶりとなるセカンド・アルバム『ベター・レイト・ザン・ネヴァー』(同:VSCD‐3364)のレコーディングが、前作同様グレッグ・マティソンをはじめとする豪華ミュージシャンのサポートのもと米LAとナッシュヴィルにて敢行され、世界に先駆ける形で日本先行発売された。さらには、この26年もの間、デヴィッドがデモ・レコーディングしていた未発表音源集『ミッシング・イヤーズ』(同:VSCD‐3365)も陽の目を見る運びとなったのである。そして遂には、デヴィッド本人が来日、この10月に渋谷、心斎橋、名古屋それぞれのクラブ・クアトロにて4回に及ぶ公演を行うこととなったのだ。 僕が観たのは渋谷でのライヴだったが、まずは客層の幅広さに驚かされた。そして、それ以上に26年ものブランクを感じさせないデヴィッドのパフォーマーとしての素晴らしさ、メロディーメイカーとしての彼の相も変らぬ天賦の才。終演後行なったインタビューでデヴィッドはこう語ってくれた。「こんなに大勢のファンが集まってくれたことに感謝したい。どんな形態であれロックは昔と違って年齢とか関係のないものになりつつある。それを今回のオーディエンスから教えてもらったよ。選曲には頭を悩ましたつもりだけど、ファンの方からは〝あの曲も聴きたかった〝って声を終演後にたくさん頂戴したんだ。それらのリクエストはちゃんとインプットしたから、来年またここに来るよ!」 なお、今回の来日公演はすべての会場でレコーディングされており、ヴィヴィド・サウンドではそれらを編集したライヴ盤の発売も予定しているという。まさに今回、AORの復権を実証してみせたデヴィッド・ロバーツ、今後の活動が楽しみである。 |
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