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評者◆上野修
論証されざる確信――必要とされるのは民衆の想像力である
野生のアノマリー――スピノザにおける力能と権力
アントニオ・ネグリ著、杉村昌昭・信友建志訳
No.2904 ・ 2009年02月07日




 『野生のアノマリー』の邦訳が、四半世紀を経てついに出た。アントニオ・ネグリの名高いスピノザ論である。この書は獄中で書かれた。ネグリはマルクス主義の危機を乗り越えさせる何かをスピノザに見出したと信じ、これを「野性のアノマリー=異形性」と名づけた。それはひと言で言うなら、危機を調停媒介の口実にしない哲学、むしろそれを構成的危機に変えるような「未来の哲学」である。
 本書の舞台は十七世紀、ルネサンス的ユートピアが持ちこたえられなくなり、ヨーロッパが雪崩を打つように絶対主義へと向かおうとしていた時代である。人文主義は市場の自生的な伸張の中で花開いた。が、この時代、もはや増大した生産力に見合う市場は見出せなくなり、ユートピアは挫折してゆく。新たな生産力と同義だった領有化は敵対的な諸個人の「利害」という観点からしか見られなくなり、利害を調停媒介する超越的な審級が求められる。ホッブズの登場だ。「万人の万人に対する戦争」を回避したいなら、自らの自由を主権者に委譲せよ。さすれば各人は主権の指令のもと、市民としての「自由」を得るであろう。領有化はいったん危機として提示され、ふたたび権力への従属によって正当化されるのである。ネグリはかかる弁証法的解決のうちに、危機の調停=媒介こそがみずからの本質...







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