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評者◆鴻農映二
続・ノーベル文学賞の獲れない構造――文学ごっこも好い加減にしろ!
No.2931 ・ 2009年08月29日




 一回では説明しきれないので、もう一度、書く。
 村上春樹の『1Q84』の韓国語版の版権は、一億円(13億6000万ウォン)で、売り渡されたという。この金額を回収するには、何冊、本が売れねばならないか? 定価1万ウォンで、全額、出版社に入る(書店や取次の取り分もあるから、そういうことはありえないが)としても、13万6000冊、売れねばならない。韓国のマスコミは、「こんなことになったのも、その間、自国の文学者育成を怠ったのが原因だ」とコメントした。てやんでえ、なに言ってやがる、という気持ちだ。
 公務員も、教員も、部長や課長、町内会長、医者、弁護士、政治家も、本を一冊、出した経歴を欲し、詩人やエッセイストの肩書きを望む。
 もっと凄い(?)のは、カルチャー・センターで学んだ、リッチで高学歴のオバサン軍団だ。掲載誌を百冊買うくらいの出費は全く負担にならない。物書きとして認められることは、原稿料が貰える立場になるのが原則のはずなのに、そういうことは、考えも及ばないらしい。こういう連中の大挙出現で、文芸誌は原稿料を払う慣習がなくなり、文学的職人(評論家など)の稼ぎ口はなくなった。野球に喩えれば、大リーガーと、草野球ばかり残り、スリー・エー(AAA)、ツー・エー(AA)、ワン・エー(A)が消滅した感じだ。これが、どれほど深刻な事態か、大変な問題か、指摘する者もいない。
 ただ一人、評論家、金宇鍾氏が、「そば屋に入った客が、これはいい商売だと思って、店を出るとすぐ隣りにそば屋を開店する。そば屋から出た客すべてがそうするようなもの」と皮肉った。この流れをだれも止められない。
 「文学ごっこも好い加減にしろ!」と叱ると、キョトンとしている。本人たちは、自分を本物の文学者と思っているのだ――。こうして、冒頭の一行だけ読めば、その内容がすべて把握できる凡俗な作品が溢れる。全てが問題だから、問題点は何かを考えるのも虚しい。
(韓国文学)









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