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評者◆伊達政保
「原発ファシズム」と政・官・財・学の翼賛体制――山本義隆著『福島の原発事故をめぐって――いくつか学び考えたこと』(本体一〇〇〇円、みすず書房)
No.3035 ・ 2011年10月29日




 かつて東京大学において理論物理学研究者であり、現在は市井の教師として科学技術史を研究し、『磁力と重力の発見』(みすず書房)で大仏次郎賞を受賞した山本義隆氏の反原発論が出版された。『福島の原発事故をめぐって――いくつか学び考えたこと』(みすず書房)である。オイラ一方的な思い込みながら、氏は今回の原発事故に対し必ず発言すると思っていたが、やはりその通りだった。
 本書は、現在生じている事態に対し、技術的レベルの手直しで解決可能と見るべきではないとし、「本質的な問題は、政権党(自民党)の有力政治家とエリート官僚のイニシアティブにより、札束の力で地元の反対を押しつぶし地域社会の共同性を破壊してまで、遮二無二原発建設を推進してきたこと自体にある」とする。そしてその歴史的経過として、昭和33年、時の総理大臣岸信介が述べているように、原発の目的はエネルギー需要の為ではなく、核兵器の潜在的保有国になることであったことを明らかにしている。見よ、今年9月初めの読売新聞社説は原発による潜在的核の抑止力というまさに同じことを主張しているではないか。
 また「原発の放射性廃棄物が有害な放射線を放出するという性質は、原子核の性質つまり核力による陽子と中性子の結合のもたらす性質であり、それは科学的処理で変えることはできない。つまり放射性物質を無害化することも、その寿命を短縮することも、事実上不可能である」。よって、「無害化不可能な有毒物質を稼働にともなって生みだし続ける原子力発電は、未熟な技術と言わざるをえない」と結論づけている。この理論的事実を曖昧にしたまま推し進められているのが、現在の原発事故対策であり原発政策なのだ。
 そして科学技術幻想の破綻を科学技術史の視点から展開し、多額の交付金で地方自治体を縛り付け、多額の宣伝費で大マスコミを抱き込み、ボス教授の支配の続く大学研究室をまるごと買収し、批判者を排除し翼賛体制を作りあげたやり方を「原発ファシズム」であると喝破した。その上で、一刻もはやく原発依存社会から脱却すべきである、と主張しているのだ。
 元東大全共闘代表の著者は敢えて触れなかったのかもしれないが、今回の原発事故で、政・官・財・学、そして電力会社の東大閥はまさに原発擁護者として立ち現れた。東大闘争の原点であった医学部の養老孟司や中川恵一の御用学者ぶりには、目を覆いたくなる。一方、少数ではあれ児玉龍彦教授のような人物もいるのは事実だ。40年以上前、東大闘争を寄ってたかって叩き潰した結果が、今日の状況を生み出したと言っても過言ではないだろう。
(評論家)







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