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評者◆原克
「私」をめぐる格闘――多孔的表象分析の醍醐味
指紋論――心霊主義から生体認証まで
橋本一径
No.3002 ・ 2011年02月19日




 一九世紀ドイツ・ロマン派の詩人シャミッソーは、自己証明に失敗している。
 深夜の書斎、見れば、「もうひとりの自分」が仕事をしている。「お前は誰だ、亡霊よ」と誰何すると、「邪魔をするのは何者だ」と、逆に問い返されてしまった。そこで詩人は、我こそは「ひとえに美と善と真を求めてやまない者である」と大見得を切った。すると亡霊は、私など「取るに足りない臆病な嘘つきだ」と答えた。これでは、相手こそ真のシャミッソーであることを認めざるをえず、詩人は夜の通りに放り出される。「私」は自己証明に失敗したのだ。
 一九世紀前半に「私」が失敗したこの自己証明を、二〇世紀初頭に証明してみせたのが、精神分析学であった。ふたりの言い分の違いこそ、私自身がいだいている「自我の理想」と、実際に「手にしている現実」との隔たりそのものである。そして、この隔たりの確執こそ、無意識においてはリアルなものである。こう解析してくれたフロイト派オットー・ランク『分身』(一九一四年)こそ、おくればせながら、シャミッソーの自己証明であった。
 自分が自分であることを証明することの難しさ。お気楽な文学ならば、それはそれで恰好のテーマにもなろう。しかし、こと犯罪捜査ともなれば、現場の困難は深刻なものとなる。
 本書は、指紋ならび...







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