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評者◆伊達政保
「これだけは許せないと思ったとき、そこでシャッ夕ーを切り始めたい」――広河隆一写真展「戦場の子どもたち・翻弄される命を見つめた50年の記録」とProject Nyx公演・美女劇「奴婢訓」
No.3349 ・ 2018年04月28日




■東京芸術劇場シアタ一ウエストのProject Nyx公演・美女劇「奴婢訓」を観る前に、5階のギャラリーで広河隆一の写真展「戦場の子どもたち・翻弄される命を見つめた50年の記録」を見た。パレスチナ、アフガニスタン、イラク、コンゴ、チェルノブイリ、そして福島と続く彼の軌跡がそこにあった。そして、写真の一つ一つが報道だけではなく、運動の中に在ったことを思い出させてくれた。たとえば彼のパレスチナの写真は、多くのポスターやチラシに使われ、パレスチナ連帯運勤を象徴するものとなっていったのだ。チェルノブイリにおいてもしかり。その地の原発事故がもたらした惨状をいち早く提示し、後の福島原発事故による原発反対運勤を導き出すものとなっていった。そうした彼の写真から豊田直巳を始めとする多くのカメラマン、フオ卜・ジャーナリストが生まれていった。
 写真に添えられた彼の文章には「ジャーナリストという仕事は、何か起こった時に結果を伝えるだけが仕事ではなくて、起こってはならないことを防ぐことも仕事なのだと理解したのです」、「私たちの「知る権利」と、人々のいのちが、とても強く結びついていること」「これだけは許せないと思ったとき、そこでシャッ夕ーを切り始めたい」とあった。まさに広河隆一の気概を示す言葉だった。
 つづいて「奴婢訓」、天井棧敷・寺山修司のこの作品を、オイラ「万有引力」と「月蝕歌劇団」の公演でしか観たことがない。主人不在の館で繰り広げられる奴脾たちの主人ごっこ、それを今回、美術・宇野亞喜良、構成・水島カンナ、演出・金守珍、青年座・文化座・劇団民藝などからの個性派女優陣、そして演奏・黒色すみれが、どのような舞台にするか楽しみだった。「奴婢訓」といえば、小竹信節の機械的舞台装置があまりにも有名で、天井棧敷直系のJ・A・シーザー音楽・演出「万有引力」版もそれを踏襲して、スぺクタクルな舞台としていた。しかし今回はそれとは全く異なった、宇野亞喜良による中世ロマネスク調の舞台美術に駕かされたのだ。
 冒頭、ストリッパーで女優の若林美保の宙釣り(エアリアル)ロープ・プレイが、観客の度肝を抜いた。そして女優達の人間的個性的な演技が舞台を埋め尽くしていく。中でも伊藤弘子(流山児★事務所)の貫禄と存在感は圧倒的だ。黒色すみれの音楽と演奏は中世ロマネスクを強調するものとなっており、エンディングで再び若林のエアリアル・シルク、そしてラストのライス・シャワー大瀑布と金守珍による演出は大サービス。寺山作品の持つシュールな感覚ではなく、まるでシェイクスピア喜劇のような「奴婢訓」だった。







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