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評者◆伊達政保
和解を保坂区長のリップ・サービスに終わらせてはならない――下北沢再開発事業に対する認可取り消しの裁判、10年の審理を経て和解
No.3265 ・ 2016年07月30日




■7年前にこの欄にも書いた下北沢再開発事業に対する認可取り消しの裁判が、①小田急線上部について、小田急電鉄と調整しつつ区民等の憩いの公共的な空間となるよう整備すること、②補助54号線(1期工区)と区画街路10号線(駅前広場)について「特例制度」(オープンカフェの設置など)を利用して歩行者に配慮した街づくりを進めること、③「広域生活・文化拠点」として位置付けられている下北沢の良好な街並みの維持・発展について、区民等の意見を幅広く聞き必要な対応をすること、との世田谷区の意見表明と、東京都の補助54号線の2期、3期工区を優先整備路線から外すとの発表を受け、10年の審理を経て和解した。
 2003年、小田急線地下化に伴って、世田谷区下北沢に町を南北に分断する道路(補助54号線)と高層ビルによる、再開発計画が持ち上がった。この再開発はこれまで積み上げられた下北沢の歴史や文化を破壊することになるとして、これに反対する住民、商店主、店のマスターや、下北沢に縁のあるミュージシャン、映画・演劇人、作家やアーティストたちが、「下北沢商業者協議会」「Save the下北沢」として反対運動に立ち上がったのだ。
 一方、世田谷区は東京都に対し「補助54号線」と駅前交通広場の事業認可を求めた。2006年、区の審議会はこの計画案の強行採決を行ない、同時に東京都はこれを認可した。住民や商店主達は「まもれシモキタ! 行政訴訟の会」を結成し、東京都に対し事業認可取消しの裁判を起こしていった。2007年からは、商業者協議会を中心として、毎年夏の時期にイベントを開催し、多彩なゲストを招いてトークライブやシンポジウムを行ない、音楽、演劇などのライブパフォーマンスにより、シモキタの文化とシモキタが直面している問題をアピールしてきた。
 2011年、東日本大震災後の世田谷区長選挙で、大型公共事業見直しを公約に掲げた保坂展人が区長に当選した。しかし区議会では少数与党ということもあってか、区政外ではリベラルな発言をするが、実際の区行政では保守区政を継承するという立場であった。2015年の区長選挙で保坂区長は区民等からの突き上げで、選挙期間中に、補助54号線の2期、3期工区の見直しを公約に掲げざるを得なくなり、ダブルスコアで再選された。そうした経過もあって今回の和解となった。
 しかし、和解後に保坂区長も出席して開かれた「下北沢デザイン会議」の後、京王線下北沢高架下プロジェクト(土手を高架化)が発表された。区側はそれを知りつつ会議では公表しなかった。和解を保坂区長のリップ・サービスに終わらせてはならないのだ。







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