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評者◆栗原幸夫
映画はぜんぶ革命だ──この国ではまだ未完のプロジェクトである「愛のコリーダ」:追悼特集 大島渚
No.3097 ・ 2013年02月09日




 まるでわが家に帰るように、いそいそと出かけるんですよ、と彼のお母さんは繰り返した。そのワガヤという時の特別なアクセントをもつ声は、いまも耳の奥に懐かしく残っている。じっさい、珍味の数々を大きな手提げ袋に詰め込んで、和服の着流しに下駄を履いて、大島渚は、わが家にやってくるのだった。「夏の妹」(1972)から「愛のコリーダ」(1976)を経て「愛の亡霊」(1978)に至る五年ほどのあいだのことである。彼はわたしの連れ合いの手料理をいたく気に入り、いい男にはいい女がいると珍説をはきながら、一分の乱れも見せずに飲みつづけるのだった。
 私たちは何を話していたのだろうか。映画についても、政治についても、記憶に残るような会話はほとんどなかった。思い出話は、ただの一語も語られなかった。私たちは、目の前に横たわっている一九六〇年代という時代の亡霊を、ただ、見つめていたような気がする。そして四年のブランクの後につくられた「愛のコリーダ」は、その六〇年代を葬送する曲のように、私には思えたのだった。
 その頃、私は編集顧問のような資格で、竹村一の三一書房を手伝っていた。「愛のコリーダ」のシナリオを出そうぜ、と私が竹村に提案したのは、作品が上映されるよりもだいぶ前のことだった。大島もほんのちょっと...







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