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評者◆ 
ジャッロをめぐる博覧強記な〈事典〉
ジャッロ映画の世界
安井泰平
No.3156 ・ 2014年04月26日




■ジャッロ映画とは簡単に定義すると、犯罪映画、スリラー映画、ホラー・サスペンス映画などのこと。そんなジャッロに属するイタリア映画約二五〇作品を解説したのが本書だ。
 とにかくすごい。帯文には「日本では類を見ない決定版入門書」とあるが、その惹句をはるかに超える内容だ。日本未公開を多数含む作品のセレクトをはじめ、ロビーカードやポスター、あるいは日本のビデオ誌に掲載されていた広告などの図版がふんだんに盛り込まれているなど、著者の博覧強記ぶりには圧倒されるばかりだ。まず「第Ⅰ部 ジャッロgialloとは何か」から、いきなりフルスロットル。ミラノの出版社がヴァン=ダイン『ベンスン殺人事件』を翻訳出版した際に表紙を黄色(ジャッロ)にしたことに起因するという語源紹介から、定義をめぐる混乱、諸外国における研究動向などを約一三〇頁にわたって詳説。ジャッロの歴史絵巻がひもとかれる。そして「第Ⅱ部 1960年から1996年のジャッロ映画主要作品」と「第Ⅲ部 1990年代以降のジャッロ映画について」では具体的な作品紹介を展開。その紹介は、ストーリーと解説に分かれており、読みやすく且つ実用的だ。また全体的にジャッロと精神分析学との関連性について、かなり執拗に追跡している点も面白い。
 イタリア映画は、ルキノ・ヴィスコンティ、フェデリコ・フェリーニら監督の名前を並べるだけでも燦然たる歴史をもつ。しかし、映画史に連ねられた名前だけが監督ではない。本書で言及されるマリオ・バーヴァ、ダリオ・アルジェント、ルチオ・フルチ、ミケーレ・ソアヴィらも、大変ユニークな作品群を生み出しているのだ。本書を通じて、史実には残りづらい映画的事実があるということは覚えておいてほしい。
 エログロ色が濃厚ゆえにジャッロは徒花のごとく扱われることが多い。いわば敗者の映画史だ。ジャッロに、ここまで真正面から対峙した本はない。四五〇〇円は安すぎると心から思える事典だ。







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