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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3175 ・ 2014年09月20日




■被災地で記憶をつなぐ紙本修復士の活動
▼思い出をレスキューせよ!――“記憶をつなぐ”被災地の紙本・書籍保存修復士 ▼堀米薫

 東日本大震災の被災地を訪ねたとき、津波をかぶって泥だらけになった写真や本などを数多く見かけました。被災地では、全国からボランティアが集まり、被災した写真を救う「写真洗浄」が進められてきました。そして岩手県大船渡市には、紙本・書籍保存修復士で製本家の金野聡子さんがいたのです。これは金野さんの活動を記録した、とても貴重な本です。
 宮城県南部に住む金野さんは、二〇一三年六月に大船渡市に向かいました。彼女が生まれ育ったふるさとでした。イギリスの大学で紙本・書籍保存を学んだ金野さんは、これまで壊れた本の修復と治療を続けてきましたが、まさかその技術が、被災地で水と泥をかぶった写真や本、手紙や書き物、賞状などの復元に役立つとは。
 ボランティア団体による写真洗浄を指導しながら、金野さんはアルバムを修復し、持ち主にもどす「おかえりプロジェクト」をはじめたのです。さらに金野さんの活動は、本や歴史史料の治療から、さらに仏像の治療へと広がります。
 「受けついだ記憶を未来へと引きつぐこと」。この本には、被災地で記憶をつなぐという、たゆみない活動の日々がえがかれています。(2・28刊、A5判一一二頁・本体一四〇〇円・くもん出版)

■豊岡の里山で生まれたコウノトリの美しい姿
▼コウノトリ よみがえる里山 ▼宮垣均 文/兵庫県豊岡市の人々 写真

 兵庫県北部、日本海に面した豊岡市では、たくさんの生き物がすめる里山づくりをすすめています。なかでも同市では、一年をとおしてコウノトリの活動を見ることができるのです。コウノトリは歌舞伎役者のような目のまわりの赤と、長くするどいくちばしが特徴です。羽をぴんとのばし、グライダーのように音もなく空を飛んでいく姿はとても美しいです。
 人工巣塔に、コウノトリの夫婦が巣づくりをはじめました。卵を産む準備をしているのです。こうして春先にかけて、卵を産みます。巣のなかに産み落とされた卵の重さは、120グラムほど。鶏の卵よりもひとまわり大きく、一日おきに一個ずつ、合計三から五個の卵を産みました。そして夫婦が交代で一月ほど温めて、ようやくヒナが生まれます。
 コウノトリはカエルや魚、虫などを食べます。稲が育つ田んぼで、農家の人たちが草取りをするとなりで、コウノトリがえさをさがす写真は見ごたえがあり、生き物たちとともに暮らす豊岡市の里づくりを実感させられます。夏になると、巣のヒナは親鳥が運んでくるえさを食べて、どんどん大きくなっていきます。こうして七月ごろ、ヒナは巣立ちのときをむかえるのです。
 豊岡から全国各地へ、巣だったコウノトリが飛んでいきます。四季折々のコウノトリの姿を記録した、見ていて楽しい里山の本です。(7・20刊、29㎝×23㎝三六頁・本体一四〇〇円・小峰書店)

■なぞのくすりをぬってユキコちゃんは……
▼ユキコちゃんのしかえし ▼星新一 作/ひがし ちから 絵

 けんきゅうしつのなかで、はかせはとうとう、なぞのくすりをはつめいすることにせいこうしました。なぞのくすりとは、あたまにぬると、たちまちあいてをおとなしくさせるくすりなのです。「これでよし。みごとにせいこうだ」。はかせはまんぞくそうにうなずきました。
 じつはものかげから、このこうけいをみていたおんなのこがいました。となりのいえの、ユキコちゃんです。はかせがけんきゅうしつをでたすきに、ユキコちゃんはすばやく、そのくすりをあたまにぬりました。「これは、いじめっこをおそれいらせるくすりだわ」。そうおもったユキコちゃんは、いじめっこのところへいって、「ねえ。いつかはよくも、あたしをいじめたわね」といいました。するとどうでしょう。おとこのこはあおいかおになり、ふるえごえで「ぼくがわるかった。あやまるよ」と、なきそうなこえをだして、にげていったではありませんか。ゆきこちゃんはすっかりおもしろくなってしまいました。
 ところが、どうでしょう。ふりむくと、ユキコちゃんのうしろには、ぞろぞろといぬがついてくるではありませんか! さて、いったいどうな
ったのでしょう。なぞのくすりとユキコちゃんのゆかいなおはなしです。(9月刊、24㎝×20㎝三二頁・本体一二〇〇円・偕成社)

■とてもカラフルなカメムシのせかい
▼わたしは カメムシ ▼新開孝 写真・文

 カメムシはとても強烈なにおいをだして、くさいといやがられがちです。でも、ほんとうはとてもきれいなムシなんですって。この本は、そんなカメムシのくらしをしょうかいしたものです。
 カメムシにはほんとうにいろんなしゅるいがあるんです。花がだいすきなアカスジカメムシ、花のみつがだいすきなアカアシカスミカメ、赤と黄色と黒いはんてんのアカギカメムシ。みているだけで、いろあいのみょうにみとれてしまいます。
 カメムシはまとめてたまごをうみますが、たまごだってとてもカラフル。いっせいにからをぬいででてくるすがたは、ちょっとグロテスク。
 カメムシのからだのいろがはでなのは、「においをだすよ! 近づかないで」ということかもしれない、とあります。そのにおいも、臭いだけじゃなく、青リンゴのようなにおいもあれば、アメのようなあまい香りもあるそうです。
 カメムシのせかいはほんとうにおもしろくて、すきになってしまいそうな本です。(7月刊、21㎝×26・5㎝三六頁・本体一二〇〇円・ポプラ社)

■オオサンショウウオの生活をカメラが捉えた

▼オオサンショウウオ ▼福田幸広 写真/ゆうきえつこ 文
 オオサンショウウオは、世界最大の両生類としてしられています。ですが、名前はよくきいても、観察がとてもむずかしくて、どんな生き物で、どのように生活しているのかは、ほとんどしられていません。この本は、世界ではじめてオオサンショウウオの産卵から子育てまでの撮影に成功した、とてもきちょうな記録です。
 ここに登場するのは、中国山地のずっと山おくに流れる川にすんでいるオオサンショウウオ。じゅみょうは八〇年ともいわれます。ふだんは川のふちや石のすきまにじっとして、石になりきって魚をつかまえます。写真でみても、まるで石のようで、よくみないと気づきません。そして、顔のまえにきた魚を、すばやくパクリ。決定的瞬間をとらえた写真はみごとというほかありません。
 そんなオオサンショウウオが一年にいちど、産卵という大仕事をするために場所をさがして旅に出るのです。そして、産卵のプロセスをカメラがとらえました。生命の神秘をかんじずにはいられません。こうして、いのちが継承され、巣立っていくのでした。(7月刊、22㎝×28㎝四〇頁・本体一四〇〇円・そうえん社)

■えものをひとのみ、きつねのわるだくみ
▼きつねどん ▼洞野志保 再話・絵

 スロバキア在住の絵本作家、洞野志保さんがハンガリーの民話から再話し、描いたお話です。
 あるところに、ずるがしこいきつねどんがいました。このきつねはにくがだいすき。ぶたのあぶりにくがたべたくて、がまんできなくなってしまいました。そうしてわるだくみをおもいついたのです。
 きつねどんはからっぽのふくろをふくらませて、あるいえをたずね、もんをたたきました。ちょうどゆうごはんのころです。「わたしはまずしいたびのものです。どうかひとばんのやどをたのみます」。このいえのあかぎつねのふうふは、しんせつにきつねどんをとめてくれたのでした。
 さてさて、こうしてきつねどんは、まんまとふうふをだまして、いちばんふとったにわとりをだましとるのです。いやいや、わるぢえはどんどんふくらみ、べつのいえをたずねては、おなじようにだまして、がちょうを、こぶたを、つぎつぎとたいらげていくではありませんか。
 それはおそろしい、きつねどんのひとのみ。このさきどうなるかは、よんでのおたのしみ。(7月刊、26㎝×22㎝三二頁・本体一六〇〇円・ビリケン出版)







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