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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3265 ・ 2016年07月30日
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■かがみの国のふしぎな世界へ
▼100年後も読まれる名作 かがみの国のアリス ▼ルイス・キャロル 作/河合祥一郎 編訳/okama 絵/坪田信貴 監修 いわずとしれた名作『ふしぎの国のアリス』の続編、『かがみの国のアリス』が、「100年後も読まれる名作」というタイトルのもと、たのしい絵本になりました。オールイラスト78点、物語ガイドや物語のおもしろポイント、アリスのチェス教室もついています。読書感想文の書き方までついて、小学生の夏休みの読書に最適な一冊です。 ある雪の日、子猫のキティをしかっていたアリスは、かがみの国にまよいこんでしまいます。かがみの国はなんと、チェスの世界。いたるところにチェスのこまが歩きまわっている、なんともふしぎな国でした。文字がぜんぶ裏表逆になっていて、かがみにかざすと、もとどおりの言葉になることに、アリスは気づきます。なんとこの国は、すべてがあべこべの世界なのでした。 そこでアリスは、かがみの国のチェス・ゲームに出て、最後はクイーンになります。 この物語には、おもしろい言葉遊びや、マザーグースもいっぱい入っていて、いろんな発見にみちています。この夏、ぜひとも名作童話にふれて、アリスの世界で思う存分たのしんでね。(7・1刊、A5判一六八頁・本体八八〇円・KADOKAWA) ■言葉とイラストで伝える屠場の世界 ▼焼き肉を食べる前に。――絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた ▼中川洋典 作 わたしたちが毎日食卓で食べているお肉は、屠場で作られています。でも、そこで働く人たちは、どんな仕事をしているでしょう。わたしたちは彼らの仕事を、どれほど知っているでしょう。この本は、そんな問いに答える一冊です。絵本作家の中川洋典さんが肉の職人たちの仕事場をたずねて聞きとった、わたしたちが「焼き肉を食べる前に」読む本なのです。 第1章の大阪府貝塚市、北出新司さんのことは、二〇一三年に公開された纐纈あや監督のドキュメンタリー映画『ある精肉店のはなし』に出てきた北出精肉店と聞けば、覚えている読者もいるでしょう。北出さんは、半世紀を捧げてきた食肉業を、世の中の人に正しく知ってほしいという思いから、苦悩し悩んだ末に、映画に出る決断をしたと語ります。この本をつらぬくのは、そんな職人のみなさんが伝える、まっすぐな気持ちや思いのこもった言葉です。 この本をひらく読者は、言葉とイラストをとおして、屠畜や屠場とそこで働く人々の世界に、思わず引き込まれることでしょう。(4・20刊、A5判一二八頁・本体一八〇〇円・解放出版社) ■好きな詩は運命を変える ▼そして ▼谷川俊太郎 詩/下田昌克 絵 読んで味わって楽しむ。そんな詩の世界にいざなう、名うての詩人の自選詩集が、絵とともに一冊の本になりました。一九八〇年にジュニア・ポエム双書から出た『地球へのピクニック』から三六年、あらたに選ばれた詩集は『そして』と名付けられました。 ここに選ばれた詩のどれかに、読者はすでに出会っているかもしれません。もういちど読みたくなる詩を見つけることに、広くて深い詩の世界への入り口があると、まえがきにあります。詩人のことばをかみしめる瞬間が、この詩集の随所にあります。たとえば「成人の日に」の一節。 「とらわれぬ子どもの魂で/いまあるものを組み直しつくりかえる/それこそがおとなの始まり/永遠に終わらないおとなへの出発点/人間が人間になりつづけるための/苦しみと喜びの方法論だ」 読者のみなさんも、この詩集の中から、好きな詩を見つけてみてください。詩人がいうとおり、もしかするとその詩は、あなたの運命を変えることにつながるかもしれません。(4・21刊、A5判七二頁・本体一六〇〇円・銀の鈴社) ■人間と自然の交流をえがく ▼ソーニャのめんどり ▼フィービー・ウォール 作/なかがわ ちひろ 訳 ソーニャはおとうさんから、「ひとりでせわをしてみるかい?」と三羽のひよこをわたされました。三羽はみるみる大きくなっていきます。 ある寒い夜のことでした。鳥小屋から「バサバサバサ バタンバタン キィーッ!」と、ものすごい音がしました。きつねが襲って、一羽をさらっていったのです。 おとうさんはソーニャに、とてもたいせつなはなしをします。おなかをすかせた子どもを、食べさせなければいけない親キツネのこと、子どもを思う親の気持ち……。お父さんは、ソーニャならキツネの気持ちも分かるんじゃないかなと、やさしく問いかけます。 ソーニャは庭のすみにお墓をつくり、きれいな石をならべて、家族みんなで思い出を話しました。そして一羽が産んだ卵がかえって、新しいいのちが誕生します。 子どもの心の成長と、世界の広がりを感じさせる、人間と自然の交流をえがいた絵本です。(6・23刊、26cm×28cm三二頁・本体一四〇〇円・くもん出版) ■小学校にすむ魔女たちのおはなし ▼きかせたがりやの魔女 ▼岡田淳 作/はたこうしろう絵 あんまり知られていないかもしれませんが、小学校には魔女か魔法使いがすんでいます。彼らはそこでひっそりと、誰かにいたずらをしたり、いいことをしたりして、生徒やときに先生たちまでをも巻き込んで楽しく気ままに暮らしているようなのです。 二十年以上もまえ、小学校の五年生だったとき、主人公のぼくはそんな魔女に階段の踊り場で出会ったのです。これはその魔女からきいた何人かの魔女や魔法使いたちのおはなしです。鳥好きのぼくは、はじめはとまどいながらも魔女の連れているクロツグミに心ひかれて魔女の語る物語に耳をかたむけるのですが、だんだんと魔女とクロツグミに出会うことが、そして魔女のおもしろいはなしをきくことが楽しみになってきたのです。二ヶ月に一度ぼくのまえに現れていた魔女はいつしか姿をみせなくなってしまったのですが……。 小学生のとき、子どもたちが感じる不思議な気配や恐怖感。誰しもが感じていたはずの、忘れてしまった遠い感覚を呼び起こしてくれるファンタジーです。ひょっとすると、これは本当のおはなしかもしれませんね。(6月刊、四六判一六八頁・本体一二〇〇円・偕成社) ■「がらくた」にこそ可能性が満ちている ▼がらくた学級の奇跡 ▼パトリシア・ポラッコ 作/入江真佐子 訳 トリシャは新学期から父親と祖母の暮らす町で新たな学校に通うことになった。胸膨らませて学校に向かった彼女はしかし識字障害があったために、障害のある子どもの集まる特別クラスに入ることになった。そしてそのクラスのことは「がらくた学級」と呼ばれていた。馬鹿にされていじめられることはあったけれど、担任のピーターソン先生は彼らの才能を信じてそれぞれの可能性を伸ばしていこうとする。がらくた置き場がどんなに可能性に満ちた場所であるか、それを伝えていく。「目の前の姿にとらわれないで……何になれるかを想像するのよ!」と。これは作者ポラッコの子ども時代がもとになった実話である。すべての可能性に満ち溢れた子どもたちに、夢や希望を与えるために描かれた素晴らしい絵本が翻訳された。ピーターソン先生の教え子たちがその後どのような大人になったのか、それが描かれた最後の頁にひとつの奇跡をみる。強い思いはどこまでもまっすぐに空高くのぼっていく。年齢問わずいつまでも読み継がれていくことだろう。(6・23刊、26cm×20cm四八頁・本体一五〇〇円・小峰書店) |
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