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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3273 ・ 2016年10月08日




■みんなで謎をときあかしましょう
▼いち、に、さんすう ときあかしましょうがっこう 3、2、1、ゼロ?
▼宮下すずか 文/市居みか 絵

 ときあかしま小学校一年三組でのこと。放課後、誰もいなくなった教室の床に、青い野球帽がおちていました。
 「サンキュウコンビ」のさんきちくんと、きゅうたくんは、教室を見まわしながら、だれのものか考え込みます。そして、クラスの14人全員の名前を書きだし、消去法で帽子の持ち主をさがす名案を思いつきました。ふたりは自分たちが探偵になったような気分で、なぞにせまっていくのです。14の数字が、しだいに3、2、1とへっていく物語はスリリングです。
 女の子四人組の「さぶろう」も、持ち主さがしにくわわります。ちなみにさぶろうは、さい、ぶた、ろば、うし、の頭文字をとったグループ名です。みんなで知恵をだし、カウントダウンで持ち主にせまる、手に汗握る展開です。
 ネタバレ注意、これ以上の種明かしはできないのが残念ですが、ぜひ本書を手にとって謎ときに加わってください。いつのまにか、ときあかしま小学校のクラスメイトになった気がするでしょう。
 なお同シリーズ第2巻『○(まる)を□(しかく)に!』が9月24日に刊行されています。併せて読んでみてね。(6・29刊、A5判六四頁・本体一〇〇〇円・くもん出版)



■夜空の満月を見上げてみよう
▼きょうはそらにまるいつき
▼荒井良二 作・絵

 太陽よりも月が好き、そんなひとは多いと思います。あなたは太陽? それとも月?月が好きな人には、共通するものがあるような気がします。荒井良二さんのこの絵本は、月を見つめる人間や動物のすがたをえがいた一冊。最初の頁をひらくと、そこには公園でお母さんの押す乳母車に乗ったあかちゃんが、月を見ている絵があります。
 大人になると空を見上げることが少なくなっていきます。でも、子どもはすぐに月を見つけます。煌々と光る満月ならばなおさらです。
 お月さんは、見上げた人に思わぬ光をとどけてくれる。この本では、バレエの練習帰りの女の子が、乗ったバスの窓から月を眺め、後ろの席では、新しい運動靴を買って帰る男の子が、やはり月を眺めています。同じ満月でも、それぞれに違う時間とドラマがある。満月の光は一人ひとりの心を照らし出すようです。
 人間だけではありません。山のなかで満月を見上げる熊、公園の大きな木の下に集まって月夜に遊ぶ猫、満月に向かって大きく跳ねる海のクジラ。頁を繰るにつれて、動物も人間と同じように月を思うのかもしれない、という気がしてきます。
 月夜の絵とともに、満月はごほうびのよう、という言葉が身に沁みます。夜空を見上げてみよう、そんな気持ちになる絵本です。(九月刊、30cm×22cm三二頁・本体一四〇〇円・偕成社)



■大きなものをちぢめてみると
▼もしも地球がひとつのリンゴだったら
▼デビッド・J・スミス 文/スティーブ・アダムス 絵/千葉茂樹 訳

 地球をちぢめる、という活動を知っていますか? 地球をリンゴにたとえて、海や氷山や湖や川に当たる四分の三を切り取り、陸地に当たる残り四分の一の半分に当たる砂漠や沼地や高山地帯などを切り取った、残りの八分の一が、人間の暮らせる土地になる。さらにその四分の三が農地に向かない土地、つまり残りの部分、リンゴ全体から見ると三二分の一が農地になるそうです。リンゴで食べられる部分がこんなにちぢんでしまう。その僅かな部分で地球上の人間の食べ物をまかなっている計算になるわけです。
 この本はリンゴの話のように、太陽系の惑星、地球の歴史、生命の歴史、過去三〇〇〇年の歴史、発明の歴史、過去一〇〇〇年の発明の歴史、大陸、水、生物の種、お金、エネルギー……をちぢめて、それぞれ見開き二頁にまとめて説き明かす絵本です。
 もしもあなたの人生が、一二枚に切った大きなピザだとしたらどうなるか。四枚は学校や仕事場で過ごす時間、同じく四枚は眠る準備をする時間と寝ている時間、一枚は食事の準備や食べている時間というふうに、人生の時間のなんと有限なことか。絵本のピザに教えられる気がします。
 大きなもののスケールダウンが見せてくれる「もしも」の世界を、ぞんぶんに堪能してください。(7・27刊、26cm×26cm三九頁・本体一五〇〇円・小峰書店)



■ココちゃんが迷いこんだ翼の国
▼ふしぎな国のおともだち――こねこの物語
▼江口みつおき 文・絵/Megumi Powell 英訳

 こねこのココちゃんは、本棚の後ろに小さな穴が開いているのに気づいて、よし、入ってみよう、と思わず身をくぐらせました。穴から出ると、そこはいつか来たことのある丘です。でも、よく見ると、魚やペンギンやねこには翼が生えていて、空を飛んでいるではありませんか。まるで不思議の国のアリスのように、ココちゃんは思いがけない世界に迷いこんだのです。この本はココちゃんが体験する冒険ファンタジーのバイリンガル絵本です。文章にはすべて英訳がつけられていて、日英両語で物語をたどることができる配慮がなされています。
 作者の江口みつおきさんは小児科医として働きながら、絵本を作り続けてきました。これまでにも『チーコのくれた宝物』(二〇〇九年)、『おそとであそんだ日』(二〇一一年、ともに銀の鈴社)という二冊のバイリンガル絵本を出しています。本書はそれに続く三冊目の絵本で、前作に続いてねこの物語です。
 それにしても、翼がついた動物たちに囲まれて、ココちゃんはどうなるのでしょう。ヒントは、この絵本のカバー表紙にあります。不思議の国に来て翼の生えた、ソラという知り合いのネコが、ココちゃんを背中に乗せて空を飛んでいます。翼がなくていじめられていたココちゃんを助けてくれたのです。
 ココちゃんとソラは、ずっとずっと仲良しになって、不思議の国からもとの世界へともどってきます。さて、どんなふうにして帰ることができたのかな? 冒険はまだまだ続きます。(8・20刊、B5判三六頁・本体一五〇〇円・銀の鈴社)



■ムスリムたちの宗教実践を知る
▼ラマダンのお月さま
▼ナイマ・B.ロバート 文/シーリーン・アドル 絵/前田君江 訳

 ムスリムのラマダンを知っていますか。イスラーム教徒が一カ月のあいだ、日中に行う断食のことです。ムスリムと接触することの少ない私たちは、イスラーム教徒がどのような宗教実践を行っているのか、あまり多くのことを知りません。むしろ偏見を強めているのが現実でしょう。それに対してこの絵本は、ムスリムにとってとても重要な、ラマダン月の暮らしをつたえてくれる、いまこそ読まれるべき絵本です。
 ラマダンはムスリムにとって、「わくわくする」ものだといいます。この絵本も、ラマダン月を「まだかな、まだかな」「やってきた、やってきた」と待ちわびるようすが描かれています。そこには楽しみという意味だけでなく、辛い断食という宗教行為に挑戦する高揚感も含まれているそうです。
 ラマダン月を知らせる三日月を迎えると、ムスリムたちは朝からお祈りをし、神さまにお辞儀をし、昼は空腹をがまんして、日没時の食事を待ちわびます。家路を急ぐ人びとは、待ちに待った夜食で解放感に浸り、親戚や友人たちとにぎやかにすごします。
 ラマダンが特別な月なのは、ムスリムの聖典クルアーン(コーラン)が預言者ムハンマドに下された「力の夜(ライラトゥル=カドル)」があるからだそうです。ムスリムたちはクルアーンを毎日三〇分の一ずつ読み、ラマダンの一か月で全体を読み終えることにも挑戦します。絵本にあるように、神さまのことばをみんなで唱え、かみしめながら祈りを捧げ続けます。こうして月の満ち欠けとともに、ラマダンの一月も一日一日と終わりへ近づいていきます。
 ラマダンを生きるムスリムの姿がとてもわかりやすく描かれた、楽しい絵本です。(8・31刊、A4変型判二六頁・本体二〇〇〇円・解放出版社)



■行きつけの銭湯に現れた天女?
▼天女銭湯 ▼ペク・ヒナ 作/長谷川義史 訳

 この本の作者ペク・ヒナは、韓国の絵本界でもっとも注目される一人で、世界的にも高い評価を得ている作家です。この本は韓国で一五万部以上も売れたヒット作ですが、いま大人気のコテコテの大阪人絵本作家、長谷川義史さんが訳者となって、大阪弁に翻訳しました。二人の絵本作家のコラボと聞いただけでも、わくわくしてきます。「わたしの すんでるまちには……ふるーい 銭湯が あるんや」という出だしを読んだだけで、何かがはじまる予感がしませんか。
 いまの世の中、たいていの家庭には風呂があり、大きなスパランドやスーパー銭湯ができて、昔ながらの銭湯は廃業するところも跡を絶ちません。それでも、おかあちゃんは娘のドッチを連れて、今日も町の古い銭湯「長寿湯」へ。ドッチは銭湯で垢すりしてもらい、上がったあとにヤクルトを買ってもらうのが楽しみで、おかあちゃんに喜んでついていきます。
 ある日、湯船で水泳選手の真似をしていると、銭湯の天女を名のる不思議なおばあさんがぬっと出てきた。「な、なんや こ ばあちゃん どっから でてきたん!」。
 ドッチと天女の物語はこの先どうなるのでしょう。読んでのお楽しみ、銭湯好きには特に読みどころ満載、随所でクスッと笑いがこみ上げます。思わぬ展開のあと、最後はにっこりほほえんでしまいます。(8・25刊、28cm×20・5cm三七頁・本体一四〇〇円・ブロンズ新社)







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