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評者◆秋竜山
笑いを哲学する、の巻
No.3017 ・ 2011年06月11日




 笑いというものは、それをずばりテーマとして、「笑いとは……」なんて題名の講演をやったりすると、必ず、前の方に座っている人達は居眠りを始める。つまらないからだ。笑いというものは、分析すればするほど、複雑化して面白くなく、つまらなくなってしまうものである。単純な笑いについて、分析しても単純にはおさまらない。笑いというものの不思議さがそこにある。エリック・スマジャ著、高橋信良訳『笑い――その意味と仕組み』(白水社文庫クセジュ、本体一〇五〇円)では、〈人はなぜ、そして何を笑うのか?〉(オビ)を、問う。人はうまれながらに笑うということがそなわっているから、誰に教えられるわけでもなく、笑うのである。なんて、いうと、笑われてしまうだろう。笑い、というものは、もっと哲学的に分析しなくてはならないものだからだ。
 〈プラトンによれば、妬みとは「魂の痛み」であり、「妬み深い人」とは間違いなく他人の不幸を喜ぶ人のことである。そすると、バカにした笑いや、からかいの笑いは、妬みにもとづくことになる。ところで、笑われるほうは何を笑われるのか、喜べる他人の苦しみとはどんな苦しみなのか。笑われるのは、無知、間違ったものの見方、つまり見当違いからくる不幸である。つまり、気が弱くて意気地のない者が、自分の境遇や身体や気質や勘違いするせいで、笑われるのだ。彼は自分が裕福で、立派で、賢いつもりでいるが、他人からみれば、貧弱で、見苦しく、愚かなのである。プラトンは述べる。「そこから、人を笑うということの性質がどんなものかがわかる。(略)」〉(本書より)
 本書では、〈フランス語における「笑う」という語の用法〉として。〈涙がでるほど笑う〉〈死ぬほど笑う、抱腹絶倒する〉〈心ひそかに笑う〉とか、他にもいろいろな笑いがあるが、〈自分で自分を笑わせる〉と、いうのがあった。〈――笑うきっかけや理由を探し求めること。「くすぐってまで自分を笑わせる」〔無理して笑ってみせる、愛想笑いをする〕〉と、いうことだが、考えてみればみるほど、そんな笑いがあるのかと思うと、笑いというものが一筋縄では行かないことがわかる。人間に笑いという行為があることが、もっとも人間を複雑化させている要因でもあるだろう。〈最後に笑うものがよく笑う〉と、いうのもあった。と、なれば、「最初に笑うものがよく笑う」ということもありえるだろう。そして、最初に笑うものは、最後に笑うものに笑われるということだ。最初に笑うものは、カッコーワルイということになり、最後に笑うものは、カッコーイイということになるのか。
 〈――無言の笑いはふたつに分類される。1上下の歯列がみえるように口を大きく開けた子供の笑い(霊長類のプレイ・フェース)。2音声化されない「鼻にかかった」笑い。音は出ないが、とぎれとぎれのかすかな鼻息を伴い、口角がわずかに引っ張られ、場合によっては若干口が開く。〉(本書より)
 それにくらべると、「爆発的な」笑い、爆笑というのもある。そういえば「にやにや」する笑いもある。それは無言の笑いの部類にはいるのだろうか。「にやにや」した笑いは、自分だけの笑いのような気がする。相手に「こいつ何を笑っているんだ」と思わせる。だからこそ笑う、笑いだ。







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