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評者◆秋竜山
目覚めのキツツキは、いきなり、の巻
No.3347 ・ 2018年04月14日




■ジャレド・ダイヤモンド著、レベッカ・ステフォフ編著『若い読者のための 第三のチンパンジー――人間という動物の進化と未来』(秋山勝訳、草思社文庫、本体八五〇円)で、キツツキのことを考えていた。世にも妙なるあのキツツキである。
 〈キツツキはすばらしい生活様式をもっている。木に穴を開け、樹皮をこじ開けては樹液や昆虫をエサにしている。つまり、一年を通して食料が手に入り、開けた穴は安全な巣穴として利用できる。当然のことながら、キツツキはとても繁栄しているのでほぼ世界中に分布している。種は二〇〇種におよび、その多くはどこでもよく目にされている。〉(本書より)
 キツツキという名前はしっている。が、どういう姿形をしているか、見てもわからないだろう。たとえば森などで、目の前にいたとしても、わからないと思う。それに、木に穴を開けているところを目撃できるというものでもない。木に開けられてある穴を、「あれはキツツキが開けたものだ」と、教えられてわかるというものだ。一度でいいから、穴を開けているところを眺めたいものだ。口ばしで木に穴を開けるという理由もあるだろう。そのことを鳥の中でキツツキだけがやっているということも面白い。そういう口先キを持っていたからだ!! と、キツツキはいうかもしれないが、自分がそういう鳥であることをしった時のことをキツツキに聞いてみたいものである。
 〈進化を重ねてキツツキのようになるのはどれほど難しいことなのだろう。実はそれほど難しいものではないようだ。キツツキには数種の近縁種が存在する。キツツキという種は木をつつき、樹皮をはぐために特別な適応を遂げてきた。こうした適応のなかには、ノミのようなくちばし、木の粉が入らないように羽で守られた鼻、厚い頭蓋骨、じょうぶな首の筋肉と、木の幹に押し当てて突っかい棒として使う硬い尾などが含まれる。〉(本書より)
 進化というものは、生まれた時から定められた運命であるわけだが、「自分はキツツキである。ゆえに一生キツツキを演じなくてはならない!!」と、責任などというものを自覚、感じるのだろう。そういえば、私はヒトである!! なんて自覚したこと、あっただろうか。キツツキは自分がしらぬ間に木に穴を開けていた、ということか。ハッラ!! と気づいて、「私はキツツキであった」なんてことって、あるのだろうか。そして、他の鳥たちは、そんなことしてない!! とか。
 カフカの「変身」という小説は、読み始めにいきなり、主人公が朝ベッドで目覚めると、自分の身体がグロテスクな毒虫の姿になっていた。という、ぶったまげた所からスタートさせるのである。もし、これが、目覚めると、キツツキの姿に変身していたというのはどーだろうか。進化ではなく、変身である。キツツキになっていた彼はベッドの中で「私は、これから、毎日木を突いて生活しなければならない」なんて、考えるのだろうか。目覚めのキツツキは、いきなりである。キツツキであるとわからないままに自分が木を突いていたことにハッラ!! として、キツツキであることを気づかせられる。いずれにせよ、あの毒虫になっていた男と変わりないだろう。彼は、いたる所に口ばしで突いて穴を開ける。それを見た他のキツツキが「コラ!! マネするなラ!!」。







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