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評者◆小嵐九八郎
短歌の王道と別の道の二つアリ
新選 小池光歌集
No.3323 ・ 2017年10月21日




■半年以上をかけても難渋する論文、批評文、思想書というのはあって、老いるとそれが拍車を掛けるのだけれど、一冊ある。年内にはその本について書こうと思うが、俺の無知なカントなどについて勉強し直していて、しんど。
 歌集は、そんなことはあるまいとたかをくくっていたが、この二ヶ月を費やしたのがある。小池光さんという、一九四七年生まれの歌人、推定するに東北大の学生運動の影響の元、短歌に「ローザ・ルクセンブルグ」や「スパルタクス・ブント」という言葉が出てくるので俺は嬉しさというか親しみを感じてしまう。レーニンが主張し、なお新旧の前衛が神棚に上げているとしか思えない“外部注入論”への疑いを少しは持っていただろうと。ごめんなさい、四十ウン歳までやっちまった学生運動のセクト主義丸出しのことを記してしまい。
 小池光さんは、若い頃に「いちまいのガーゼのごとき風たちでつつまれやすし傷待つ胸は」と、何とも切ない気分を、たぶん、激しかったであろう学生運動の収束の後の虚脱の時代とおのれを歌い(『バルサの翼』)、これも当てずっぽうだが壮年の時だろう「廃駅をくさあぢさゐの花占めてただ歳月はまぶしかりけり」(出典の歌集は分からず。日本の現今の滅びを撃つので、九八郎は暗唱できた)を静かに、まこと、静かに絶唱している。あれーっ、『週刊文春』にすら、「アベ政権のよいしょ記事ばかり」的なことを書かれた『読売新聞』の歌壇の選者であるわな。
 その、時をたっぷりもらって読んだのは、ハードカバーでなくソフトカバーで、砂子屋書房から出ている現代短歌文庫『新選 小池光歌集』(本体2000円)だ。
 歌う時だけ“正義”や“変革者”や“殉教者”になるフツウの歌人とはまるで別、消せない二七リズムを抱え、それを抱えるおのれをゆったりと嗤い、ユーモアや喜びや淡い皮肉に漂っている。むろん、感動にも。いいなあ。
 「扇風機の風よろこべど人の世はああ灰皿の灰がちりとぶ」、「偽書作りに賭けし一生のをはるときほほゑみせりきとわれはおもふに」
 もっと、きりりとしたのもあり、買って探してください。短歌の王道と別の道の二つアリ。







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