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評者◆伊達政保
あの時代ばかりか現代においてもシュールで衝撃的な作品――月蝕歌劇団が本公演100本記念として、つげ義春原作の『ねじ式・紅い花』を上演
No.3332 ・ 2017年12月23日




■あの月蝕歌劇団が本公演100本記念として、つげ義春原作の『ねじ式・紅い花』を上演すると聞き驚いた。1960年代後半に漫画雑誌「ガロ」に掲載され、あの時代ばかりか現代においてもシュールで衝撃的な短編である。オイラがそれらの作品を読んだのは69年、大学一年の時だった。そのような作品をどう月蝕風に舞台化するのだろうと思って観に行った。脚本・演出の高取英はその二作品の他に「初茸がり」「沼」、そして初期の作品で未読の忍者漫画「女忍」とこれまた未読の「狂人屋敷の謎」をミックスして月蝕らしいストーリーを作り上げていた。
 シュールな「ねじ式」のメメクラゲに腕を噛まれた少年が彷徨する冒頭から、「紅い花」の少女キクチサヨコの、原作には無い祖父に「初茸がり」のじいちゃんをアル中にして合成し、なんと元状況劇場の大久保鷹が圧倒的な怪演である。シンデンのマサジ(岬花音菜)とサヨコ(慶徳優菜)の対話シーンはまるで原作から抜け出してきたかのようだ。サヨコは「沼」の少女と合成して、使う言葉は「もっきり屋の少女」の会津弁、「沼」のハンターは「紅い花」の旅人に合成され、アングラ・ベテランの宍倉暁子が演じている。
 サヨコの祖父が芭蕉の句を詠み、芭蕉は伊賀の忍者だったと説く。場面は一転し伊賀忍者の頭領(なんと足立正生監督が熱演)が女忍に豪族の暗殺を命じる。女忍は捕えられ豪族の側室となり息子・宗近(白永歩美)を生む。長じた息子と共に豪族を暗殺。天正伊賀の乱が起こり伊賀を裏切って信長方に付いた頭領に、女忍たちは殺害され息子は現代に転生する。息子の祖父は子供を誘拐し野生化させ、忍者兵士を製造する科学者澤地(発見の会の重鎮牧口元美)だったのだ。
 これらの話が時空を超えて絡み合いながら展開していく。オイラさすがにそれらの展開を追いかけるのに精一杯だったが、その一方で原作のカットの一つ一つや「ねじ式」の婦人科医のシーンが思い出され、それが舞台上に表現されていることに感動してしまったのだ。アフター・トークでは流山児祥と高取の対談、客席には元曲馬舘の翠羅臼がいた。まさに原作から出演者に至るまで、これぞアングラの総結集。そうそう、音楽のJ・A・シーザーも忘れてはならない。また劇中の音楽で、転生した母を確認するための子守唄に、赤い鳥の「竹田の子守唄」とその元唄が効果的に使われていた。69年に発表され70年代初頭メジャー発売によりミリオンセラーとなったこの曲。後に部落民謡だという理由で放送が自粛され、30年間もその存在が消されてしまっていた。「紅い花」からの連想で赤い鳥のこの曲を使ったのかな。







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