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評者◆小嵐九八郎
滅びが必至のにっぽんへの抗い
柄谷行人講演集成1995‐2015
柄谷行人
No.3332 ・ 2017年12月23日




■早めに紹介しなくては本紙の読者に申し訳ない本と思いながら、俺の知的なそれがあまりに淡く、一読した後に、カントをやっぱり勉強し直してからと考え、結果、要するに、カントは自然や人間や道徳の考えを神学から切り離し、認識の力の可能性と限界を明らかにした近代哲学の祖としか老いた頭に残らぬまま来ちまった。
 その本は文庫で『柄谷行人講演集成1995‐2015――思想的地震』(ちくま学芸文庫、本体1000円)だ。
 かつて当方は、東日本大震災の前に、本紙にて柄谷行人氏にインタビューをした(うろ覚えだが『柄谷行人 政治を語る』とかで平凡社の文庫になっているはず)ことがあり、氏は「社会構成体の歴史を、交換様式から見るという観点」、これは「マルクスが生産様式から社会構成体の歴史を見たことを、批判的に継承するもの」としていて、俺はマルクスより動的、立体的と畏れた。この文庫本にも『移動と批評――トランスクリティーク』として、新宿の紀伊國屋ホールで話したことがラストに収められている。しかし、講演のせいか、より噛み砕かれていて、解り易い。この方法論と視点はなお鉈の刃のごときだ。
 その上で、娯楽小説の物語ばかり書いている俺のそれは哲学性や思想性が薄過ぎるのであまり関わり合いがないのかも知れないけど、やっぱり重大事である。『近代文学の終り』の章の語り(2003年、近畿大学で為し、インスクリプトに収録)が余りに洞察と事実において厳しく迫る答えと映り、再びへたり込む。
 もっとも、俗的なことのみ記している俺は、この章で近代文学開始前後の尾崎紅葉の『金色夜叉』の分析あたりに出てくる“女の処女性の値打ち”“夜這い”“セックスの金銭的見方”の「明治20~30年代」の柄谷氏の男と女の関係論、都市と農村の女が自らを商品として認める違い、もっと露骨にいえば「ただでやらせるのはもったいない」という都市部の感覚に至る実証性に、ほお、と喜んじまう。“粋”の解明すら出てくる。若者はここいらを読み、是非、滅びが必至のにっぽんへの抗いへの哲学・思想・文学を知るべし。







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