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評者◆添田馨
暗黒の時代から漆黒の世へ③――絶対零度の言葉が求められている
No.3335 ・ 2018年01月20日




■“漆黒の世”とは、まともな議論が通じなくなった世の中のことだ。議論の通じない相手と私たちはどのように戦えばいいのか。例えば、ミサイルは言葉ではない。ミサイルを撃ってくる相手にミサイルを撃ち返しては駄目だ。言葉なのだ。まずは言葉を届かせなくてはならぬのだ。
 安倍政権は言葉の通じない政権である。恐るべきことに言葉の通じない政権が憲法改正を主導している。単に改憲勢力が三分の二以上を占めるから“漆黒”なのではない。言葉の通じない勢力が立法府で多数派を占める状況が“漆黒”なのである。
 私は現行憲法のいかなる改正にも反対だ。憲法の文言には指一本触れてはならぬと思っている。その理由は、この憲法がただの法文典ではないからだ。わが国の三百万人を超える戦争犠牲者の存在を、唯一有償化しているのが現行の日本国憲法だからだ。これに手を出そうとする勢力は、すでにその時点で戦後世界の礎たる戦争犠牲者の霊を二度殺しているのである。
 「立憲的改憲論」という考え方がある。解釈変更で憲法を好き勝手に空文化させる政権の暴走を縛るためには、明文化つまり憲法条文の合憲的改正をもって対抗しようという考え方である。議論の通じない相手には、法規範の条文でもってこれを押さえ込もうという作戦だ。だが……と私は思う。腐敗の構造にまみれた安倍政権は、そうした正攻法の通じる相手ではすでになくなっている。
 彼らはミサイルこそ撃たないが、公的なさまざまな場において〈嘘〉と〈偽り〉の答弁を平然と打ち上げ、誰憚るところがない。その裏側に隠蔽されているのは「九条二項」削除の大陰謀だ。安倍晋三ら政権側の人間が放つこうした“黒塗り”の言葉は、将来わが国で発生する戦争の危険を徹底的に隠蔽してなされる国民への国家的詐欺行為である。ミサイルよりもはるかに危険なフェアプレイを装った反則攻撃なのである。彼らの汚れた舌を凍らせる“絶対零度の言葉”がいま最も求められているのである。
(つづく)







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