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評者◆秋竜山
もっともではない「ごもっとも」、の巻
No.3337 ・ 2018年02月03日




■ヒトコマとか四コマのマンガは、見て一瞬の内にわかる。パッと見てパッとわかる。その刹那、笑えるか。笑えないか。いくら、早くわかっても、笑えるか、笑えないかが問題である。笑いというものは、その作品の内容とか意味がわからずに笑えるというものではない。わけがわからないけど笑える。「アハハハ」などと、ありえないだろう。パッと見てパッとわかる。と、いうのがミリョク的である。めんどくさくなくていい。そういう漫画を描いて、おそるおそる出版社へ持っていく。それを編集者に頭を下げながら差し出す。「見てください」。パッと見て、パッとわかる。面白いか、面白くないか。笑えるか、笑えないか。これが、長いコマ物であったら、そーはいかない。差し出すと同時に結果としての解答をえることができるのである。あきらかに、つまらないという顔つきだった。問題は、その後である。「しかしですね」と、返された作品について、こっちも「しかしですね」と、いいたくなるのが人情だろう。と、いうようなことをフッと思い出した。昔、若い頃、漫画家をめざしていた頃のことである。本田有明『ヘタな人生論より葉隠――あなたの生き方に明快な答えを出してくれる本』(河出文庫、本体六四〇円)に、
 〈「ご尤も」と「ご覧の通り」のふた言だけで、ほんとうに人を説明できるものだろうか。思わず「しかしですね」と言い返してしまいそうだが、いやいや、それがいけないのだ。小林秀雄がわざわざ批評の対象に取り上げているのだから、まずは「ごもっとも」と虚心に従ってみよう。〉(本書より)
 たとえ、見てくださいと頭を下げてさし出したマンガであっても、笑えないと返されたとなると、「ごもっとも」と虚心に従って引きかえすことができるだろうか。
 〈「この無口な人に口癖が二つあった。一つは「ご尤も」という言葉、一つは「ご覧の通り」という言葉である。誰かが主張する意見には決して反対せず、みんな聞き終ると「ご尤も」と言った。自分の事になると、弁解を決してせず「ご覧の通り」と言った。この口癖には何とも口では言えぬ感じがあり、また、ある言いようのない魅力があった。彼には、人を説得するのに、「ご尤も」と「ご覧の通り」の二た言あれば足りたわけになる」〈文藝春秋〉(本書より)
 「いや!! 実にケッサクです。面白いですね。大いに笑えます」と、言われ、「あずかっておきます」となった。それでいて、ついに雑誌にのせられることがなかった。「ウーン、いまひとつってとこですねぇ」としぶい顔をされて、「一応、あずかっておきましょう」と、いうことになった。そして、すぐ掲載された、というのであった。「どう思う。秋さん」と、きかれ、よくわからなかった。相手の言葉に対しても、ひたすら「ご尤も」をとなえていたら、どーなるのだろうか。「ご尤も」「ご尤も」「ご尤も」、返事は「ハイ」のひとこと、ということと一緒であって、「ご尤も」を連発されると、なにやら馬鹿にされているようにも思えてくるものだ。「ご尤も、ご尤も、といわれて、よくわかりました。ところで、そのご尤もを、別のいいかたはありませんか」「ハイ!! ご尤も」「つまり、ないってことですね」「ハイ!! ご尤も」。







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