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評者◆添田馨
暗黒の時代から漆黒の世へ⑤――総理大臣の浅はかな策略
No.3344 ・ 2018年03月24日




■「自衛隊員たちに、君たちは憲法違反かもしれないが、何かあれば命を張ってくれというのは余りにも無責任であります。そうした議論が行われる余地をなくしていくことは、私たち世代の責任ではないかと考えております。」――これは平成二十九年十一月二十一日の参議院本会議における安倍総理の答弁だ。ここには一片の真情すらない。なぜなら、第九条二項を残したまま新設の三項に「自衛隊」を明記するという総理案の、これは見えすいた裏宣伝だからだ。本心を隠して耳ざわりのよい嘘八百を叫ぶだけの“漆黒”の政治戦略だからだ。
 憲法学者らによって、総理の“加憲”案は法的に難しいことがすでに続々と表明されている。また政治家の間からも根源的な矛盾を指摘する声が複数あがっている。つまり底の割れた浅はかなアイデアだということが完全にばれている。にもかかわらず、彼は何故この“加憲”に拘泥するのか。
 自分の在任中に何がなんでも改憲の発議へこぎつけるには、これが最も簡単に見えたからだ。公共的な見識の欠片もない、駄々っ子のような理由からだ。公権力の私物化、ここに極まれり!
 自衛隊とはだれか? 彼等は私たちの親兄弟だったり息子たち娘たちだったりするだろう。言い換えれば、私たち自身であるだろう。そういう彼らをお前らは憲法違反の存在だからといったい誰が白眼視などしてきたというのか。誰が「何かあれば命を張ってくれ」などと願ったりしたか。3・11の時もそうだったように、困難きわまる災害救助に当たる彼らの志気の高さを、私たちは身に染みて知っている。逆にそういう彼らが、理不尽に“命を張る”ようなことにならぬよう願ってきたのではないのか?
 “加憲”の法的根拠が揺らぎだしたのを見て、ついにこの男は言うに事欠き「国民投票で否決されても」自衛隊が合憲であることは変わらないなどと言いだした(二月五日衆院予算委員会)。やってもやらなくても変わらないなら、憲法改正など最初からやるな。
(つづく)







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