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評者◆臥煙
選手とその伴走者を描いた心暖まる物語
伴走者
浅生鴨
No.3350 ・ 2018年05月05日




■伴走者:視覚障害のある選手が安心して全力を出せるように、選手の目の代わりとなって周囲の状況や方向を伝えたり、ペース配分やタイム管理をしたりする存在。

 パラリンピックには障害の種類や程度によって様々な競技がある。本書は2部構成、全盲のマラソンランナー、スキー選手、彼らを支える伴走者の話。
 本書の随所に表れるが障害があるとはいえ、他の行動はいたって普通。変に気を遣われるより、自分のできることは自分でやりたいというのが本音らしい。
 本書は小説ではあるが、題材は実際のもの。
 マラソンの全盲クラスの世界記録は2時間31分59秒。伴走者も2人で交代するという。本作は先天的ではなく、事故で視力を失ったサッカー選手が全盲マラソンの世界で活躍する。その伴走者を主役としている。短いロープを握り合う二人。伴走者は同じ歩調で走りながら路面の状況やカーブなどを知らせる。マラソン選手が一流のアスリートならではの傲慢な所が面白い。障害者=善人、というステレオタイプをあえて打ち消した設定が成功しているように思う。
 もう1作のスキー編は食品会社の営業マン、かつてはスキーのトッププレイヤーだった中年男性が、社命として全盲の女子高生スキー選手の伴走者になる話。
 こちらは無線で指示を出すほかは、伴走者と少し距離をおいて滑る。目が目えてもある恐怖心。目が見えないとなおさらのことだろう。恐怖心を克服して滑る選手。
 なぜ、滑るのか、伴走者として人間的な成長など心暖まるストーリー。上空から見れば伴走者そして選手が全く同じシュプールを描いていく。映画にしたら面白そうな話であった。残念ながら全盲クラスのアルペンスキーは日本ではあまり普及していないようであるが。
 著者は元NHKの職員。最初本書を手にした時は、なぜノンフィクションにしなかったのか、と思ったが小説としても見事に成功しているように思う。おそらく多くの選手への取材の中から著者の頭で人物が動き出したのだろう。
 2020東京大会へ向けてパラリンピックもさらに注目されていくことだろう。
 本書をきっかけに多くの人が競技に興味を持ち、また自分一人が競技に参加するより難しい伴走者について関心を持つことだろう。
 読後感も爽やかなスポーツ小説でした。







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