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評者◆ベイベー関根
巨大数は誘うよ
寿司 虚空編
小林銅蟲
No.3350 ・ 2018年05月05日




■あー、ウチでは『やれたかも委員会』とか『こぐまのケーキ屋さん』とかはやんないからね、そういうのが読みたかったら別なところへ行ってくんな。
 といいながら、今回は本紙編集長から「これをやんないんだったら、国会議事堂と首相官邸と図書新聞本社ビルに火をつけて、オレも死ぬ」と脅迫され、お、そりゃ面白そうじゃん!? と思ったものの、テロを教唆したことにされても面倒なんで(こういう冗談が通じにくくなっているのが、21世紀というトポスであることくらいは知ってるがの~)、半年くらい前にリリースされた作品を取り上げる。小林銅蟲[どうむ]『寿司 虚空編』だ!
 実は、『めしにしましょう』が出たときも、うーん、どうしようか、と考えたことがあったんだけど、めしマンガはもういいか、というより、なんかどっかオタクくさい感じがしてスルーしちゃったんだよね。
 いや、ひと目見ただけで、才能あることはわかる。何でもできて(少なくとも本人はそのポテンシャルがあることは自覚してるはず)、それをどう料理すればいいかもわかっている。にもかかわらず、根本的な距離感というか、対人的パースペクティヴがどっか狂っている感じがして万人にオススメしづらいんだよな。これであんがい、そういうことも考えてんだよ! しかし、これはホメことばでもあって、どうかしてる側に完全に振り切れた方の作品が、この『寿司 虚空編』つーことになる。
 このマンガ、タイトルどおり寿司屋が舞台で、登場人物も寿司屋なんだが、扱われる主題は寿司ではない。数学、しかも巨大数をめぐる議論なのだ!
 巨大数? そう、とにかくデカい数だ。冪乗よりも超冪よりもツヨい演算を使い、桁数を指数で表現することすら困難で、宇宙のすべての原子の推定数よりもはるかにデカくなる数。
 もっとデカく、もっともっとデカく! とばかりに、寿司屋の親方と職人、そして親方の娘の霊が、グラハム数だのふぃっしゅ数だのS変換だのアッカーマン関数だのについて講釈を垂れまくる! あなたはデカい数字のイメージにどこまでついてこられるか?
 実際に本書でどういう議論が展開されるのか、具体的に紹介してみたい気もするのだが、たぶん図書新聞の組版能力では再現不可であろうから(別に悪口ではない)、図版を参照してもらいたい!
 たぶん作者にとって大事なのは、巨大な数に対するロマンではなく、巨大さを生み出すにもアイディアとコンセプトが必要で、なおかつそれは鍛えられる、という点なんだろうなー。そういうところはいいなと思うんだが、一方で、数学の話の途中にプロレスネタとか別のマンガネタとかをぶっこんでくるようなところがまたオタクくさくてちょっとなあ……。フランク・ザッパはまるっきりオタクくさくないが、ザッパマニアはなぜかみなオタクくさい、という事実にひそむ闇はなかなか深いぜ!







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