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評者◆ベイベー関根
文は人なり、というけれど、文のどこが人なの?
みやこ美人夜話
須藤佑実
No.3353 ・ 2018年06月02日




■最近さー、芸大とか音大とか出たポップスとかジャズのミュージシャンがいるじゃん? そんなんうまくて教養もあるに決まってんじゃん! ズルいよ、せめて専門学校くらいにしといてよ! って気がすんだけど、実はそれについてはマンガの方が先を行ってんだよね。美大を出てるマンガ家とかむっちゃいるでしょ? だけど、絵がうまいだけの人って、さほど好きになれなくてさ、転調が面白いとか歌がうまいみたいなことはわかっていても、チャゲアスとか玉置浩二とかL←→Rとか真剣に聴く気にならん、でもキリンジとスカートは好き、みたいな。
 と思っていたら、またちょっといい人が現れたぜ!『みやこ美人夜話』の須藤佑実だ。きれいな絵で(ときどき耳の位置とかが変だけどな)、ちょっといい話を読ませてくれる。デビュー作『流寓の姉弟』はすでになかなかの佳作、前作『ミッドナイトブルー』は、女性誌移籍後の習作を集めた小品集だったけれど、今回のは京都をめぐる連作短編集で、一篇あたりのページ数も増え、読みごたえあり! 各編に共通なのは、別れと思いとちょっとした怪談み、それにもちろん京都弁。
 第1話はこんな感じ。
 街で元上司を見かけて、あわてて近くのバーに逃げ込んだ長田(26歳)は、京ことばの女ミヤコに隣席へと誘われる。元上司が羊に見えたという長田にミヤコは猫にまつわる怪談を語り、長田はブラック企業勤務時代に激務すぎておばあちゃんのお葬式にも出られなかった後悔について話す。ミヤコに心奪われた長田は鼻血を出し、意識を失う。目がさめるとミヤコはいない。長田はミヤコにもう一度めぐり会うことができるのか? いや、できるんだけどね、わりとすぐ。
 現実とよく似た異界との微妙なズレ、それと京都と東京(札幌?)の微妙なズレとが絶妙にマリアージュ? ともあれ、人の大事なところにふれるこういう話を読むと、ちょっとホッとするね、ユーモアのさじ加減もいい塩梅だし。
 社会と個人との接点とか背景とかをうかがわせるディテールが描きこまれてるのもいいとこだねー。青木俊直『ripple』とかだと、ディテールが足りてないのが、実にもったいない!
 いや、『みやこ美人夜話』の方も、基本的に出てくる人は純情でいい人ばっかりではあるんだけども。それでも、クソ忙しいオフィスの様子やら、お師匠さんの「もっとお尻落としよし!」というセリフやら、枕元の煙草盆やらビルの谷間に残る古いお店やらのおかげで、作品の足が地についてる感じがするわな。
 もうひとついいなと思ったのが、29ページ3コマ目のTVのことさらぞんざいな描写で、このコマが気にいって本作を取り上げることにしたといっても過言ではない!(笑) やっぱり単なるうまいヘタというより、絵に対するアプローチに作家のなにがしかが現れてくる気がすんなあ。さあ、どんなコマかは買ってみてのお楽しみだ!







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