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評者◆小嵐九八郎
「詩型の融合」への決心の出発点
歌集 Confusion
加藤治郎
No.3365 ・ 2018年09月01日




■蕪村に、物書きになる前から関心があった。初期マルクスの説く「人間の分業への細分化による情け無さ」の心を突破する実際が、画と俳諧と書にあるからだった。そして、嘘八百を並べて小説としてやっと今日脱稿した。改めて勉強すると、画・句・書に、音楽が共通してあると知る。たぶん、蕪村は太鼓や三味線においてもかなりの名手だったのではないのか。七五調としても、萩原朔太郎を初めとして、近現代人が感動する話を作っている。
 例によって取り上げるのが遅かったが、短歌の先端を穂村弘さんと共に走っている加藤治郎さんの『歌集 Confusion』(本体1800円、書肆侃侃房)についてあれこれ思った。タイトルの『Confusion』は、英語にも弱い当方だが「混乱、混同」、時に「狼狽」の意味のはず。その通り、普通の歌集を10とすると55ぐらいの冒険をしていて、五七五七七だけでなく、前後に五七五ではない言葉、説明というよりは独り言と批評文、更に散文詩まで入っていて、どうやら「詩型の融合」への決心の出発点らしい。従って、詩人の野村喜和夫氏との討論も入っていて、かなり刺激的である。「おや、蕪村と同じ類い」と俺は感じて、老人ながら、けっこう熱い気分で読んだ。
 加藤治郎さんは、俵万智さんが一九八七年に『サラダ記念日』を出した頃、俵さんの女の喋り話の新鮮さと親しさに対して、男の捨て台詞みたいな『マガジンをまるめて歩くいい日だぜ ときおりぽんと股で鳴らして』などの歌の入った『サニー・サイド・アップ』の処女歌集を出している。振り返ると、短歌史としては、かなりのできごと。
 ま、古い歌しか解らぬ俺だが、
《きみがいて詩があるように原っぱはさりりさりりやまないのです》
 の擬音語が音楽になる、虚しさでの歓びに感激してしまう。蕪村並みなのだ。
《もともとの終った後にクロールのまねして父は畳をあゆむ》
 悲しいですな。生は短し、加藤治郎さんはどこへ着地するのか。ふっ、老人にも共振する歌を、たまには。そう、遊びで茂吉調を。







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