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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3368 ・ 2018年09月22日
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編集部
こどもの本棚 まんがと手紙が物語る特攻隊員の生と死 ▼まんが少年、空を飛ぶ――特攻隊員・山崎祐則からの絵手紙 ▼山崎祐則 著/稲泉連 解説 アジア太平洋戦争のさなかに、日本の軍隊でまんがを描いていた特攻隊員がいた。そして一九歳で戦死――。このくだりだけでも引き込まれる。本書はペンネーム「青空高士」こと山崎祐則の生涯を、まんが作品やスケッチ、手紙、解説などでえがいた、ずしりと重い一冊である。 山崎は一九二五年一一月、高知市に生まれた。小さい頃から絵が好きで、さらに空を飛ぶことを夢見た。少年にとっては、まんがと空を飛ぶという二つは、不即不離の夢だったのである。本書に収められた、筆跡も鮮やかな絵入りの美しい手紙が、彼の夢と進路のゆくえを刻々と伝えていく。こうして一九四二年に予科練に入隊、故郷の高知を離れて、三重海軍航空隊での軍隊生活が始まった。 入隊後の手紙の雰囲気が、それまでの手紙とがらっと変わっていることに気づく。検閲を強く意識している様子がうかがえると解説にある。なかでも彼の手紙がユニークなのは、まんがで予科練の訓練や日常などを生き生きとえがいていることだ。本書には『空の少年兵』という手帳がカラーで収められ、見るのも楽しい。ハンモックで眠り、号令で起床して掃除、食事の用意、食事中の様子などが順を追ってえがかれている。 一九四二年一一月一五日の祖母あての手紙には、水兵服から七つボタンの制服に変わった様子が絵入りで伝えられ、授業や訓練が本格化していく前触れが感じられる。四三年六月一四日の父あての手紙には、真っ白の夏の制服で敬礼する自画像をえがいて、父に報告している。ハガキ大の紙に書いた一枚絵をまとめたカード集はカラフルで、目にも美しいみごとなまんがだ。戦況を感じさせない雰囲気だが、実戦が刻一刻と近づいている。本書は詳細な解説と年表で、その冷厳な現実を伝えていくのである。 山崎特攻隊員が乗ったのは、飛行機「銀河」である。アメリカ軍の東京空襲が始まった頃、一九四四年一一月半ばに、彼はフィリピンのルソン島に実戦部隊として配属される。翌一二月には鹿児島県出水航空基地に転属し、ついに三月二一日、九州東南沖へ出撃、戦死した。沖縄本島にアメリカ軍が上陸する少し前のことである。 死の直前までしたためられた手紙とまんがの数々に、山崎祐則という青年の存在感がひしひしと伝わってくる。まんがの描線に表れるやさしさが、戦争のリアリズムを際立たせる。子どもから大人まで、世代をこえて多くの読者に手にとってほしい本である。(9月刊、20㎝×28cm二二四頁・本体四二〇〇円・偕成社) 人間を脱皮してマムシの世界へ ▼わたしの森に ▼アーサー・ビナード 文/田島征三 絵 この絵本は、「大地の芸術祭2009」で制作した、絵本作家の田島征三さんの作品「絵本と木の実の美術館」から生まれました。作品といっても小さなものではなく、新潟県十日町市鉢集落で、廃校をまるごと「空間絵本」としてよみがえらせたものです。詩人のアーサー・ビナードさんが二年にわたってそこを訪れ、雪国の四季と暮らしを体験しながら、田島さんとのコラボレーション「カラダのなか、キモチのおく。」を制作し、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」で発表しました。この絵本は、そこで発見した物語だそうです。 絵本の主人公はマムシです。マムシと聞けば猛毒をもつ危険な生き物だと、誰もが警戒するでしょう。でもビナードさんはマムシの側に立ってみて、その魅力を鉢集落で見つけたのだといいます。まず、マムシの「卵胎生」とよばれる妊娠方法からしておどろきで、私たち人間に近い産み方で子どもを産み、守り育てています。また、餌のとりかたにも流儀があることがわかります。ネズミなどの小動物をとるときには、ひと噛みですばやく毒を注入し、無力化して呑みこむ。あごの関節をはずすようにして口を最大限に広げ、呑みこむ姿はそら恐ろしいですが、人間など図体の大きいものは呑みこまないそうです。では、なぜ人間が噛まれるのか。理由は、人間の側の鈍感さにあるのです。マムシの暮らしに侵入した人間に対して、自己防衛で噛むわけです。 鈍感さによってではなく、田島さんの絵をトンネルにしてマムシの森へもぐりこみ、人間を脱皮したら……。ビナードさんはそんな思いを本に込めたそうです。大地の芸術にふさわしい世界がここにあります。(8・5刊、A4判三二頁・本体一四〇〇円・くもん出版) 理想をもって未来へ、未知の冒険への招待 ▼13歳までにやっておくべき50の冒険 ▼ピエルドメニコ・バッカラリオ/トンマーゾ・ペルチヴァーレ 著/アントンジョナータ・フェッラーリ 絵/佐藤初雄 監修/有北雅彦 訳 世界で500万部を突破した大ベストセラー『ユリシーズ・ムーア』シリーズなどで知られるバッカラリオが、一三歳、日本でいえば中学一年生までにやっておくべき五〇の冒険とは何かを、本書にまとめました。これは真の勇者と挑戦者だけが達成できる、とても難しい(?)ミッションです。隠された宝物を見つけ出せ! という掛け声のもと、読者はこの本で冒険者としての第一歩を踏み出すのです。 冒険のルールは一三あって、この本を肌身離さず持っていること、できるかぎり多くのミッションに挑戦すること……と続きます。計画力、勇気、ワクワク力、注意力から、経験値をはじきだす念の入れようです。 ぜひ本を読んでほしいので、詳細をここでは明かせませんが、とても大切なのは、冒険とはいったい何か、ということです。ラテン語の冒険(AD VENTURA)という言葉には「未来に起こること」という意味があるそうです。理想をもって未来へ! そのメッセージを信じて、本の世界に入ってみましょう。(16・9・30刊、四六変型判一九二頁・本体一六〇〇円・太郎次郎社エディタス) 天国でぼくたちを見守る一人と一匹 ▼おばあちゃんとセブン ▼山崎陽子 ぶん/鈴木まもる え ぼくのともだちは六人と一匹。なかには公園で知り合ったおばあちゃんがいます。とてもものしりで、やさしくて、いろんな話をしてくれる、とてもだいすきなともだちです。一匹というのは、犬のセブンのこと。ある日、セブンが病気になって、ついに死んでしまいます。ぼくも我慢していたけど、やっぱり泣いてしまった。そのうち、おばあちゃんも病気になって、亡くなってしまったのです。 セブンが死んだとき、おばあちゃんは、セブンが神様のいらっしゃる天国へ呼ばれたのよといいました。神様に守られ、とてもきれいなところにいて、ぼくたちを見守っているのだと。ぼくらはその話を思い出して、おばあちゃんもセブンのいる天国へいったんだ、そこから見守ってくれているんだと気付きました。 天国の存在を子どもたちに伝える、とても大切なお話がつまった絵本です。(87・5・1刊、24cm×19cm三二頁・本体一一四三円・女子パウロ会) ポジション争いとチームワーク ▼ナイスキャッチ! Ⅲ ▼横沢彰 作/スカイエマ 絵 足のけがで野球部の部活を休んでいた堂島先輩が、いよいよ復帰した。でも、キャッチャーのこころは浮かない顔だ。だって、キャッチャーだった堂島先輩の代役で入部したんだもの。先輩が帰ってくれば、自分の居場所はなくなるんだろうか……。ピッチャーの哲平も気が気でない。 堂島先輩がキャッチャーのとき、哲平は先輩のサインや指示にそのまま従う。素直というより「従順」に。でも、こころのときは、自分の気持ちを出す。自分らしさが出ていることに気づくのだ。 さて、野球部はこれからどうなるのか。ポジション争いのゆくえ、練習の成果は、いかに?(7・30刊、四六判一七六頁・本体一四〇〇円・新日本出版社) さかさまの世界を旅する父と娘のお話 ▼アンナの空 ▼スティアン・ホーレ 絵・文/小柳隆之 訳 三元社が日本の読者におくる、ノルウェーの絵本作家スティアン・ホーレの絵本の第二弾。世界各国で作品が翻訳出版され、ボローニャ国際児童書展ラガッツィ賞も受賞している人気作家の一冊です。 ママが亡くなって、すべてが痛みにみちた日。だれかが空からクギをふらせている、そんな表現が見開きに広がります。青空にクギの雨と、まるでマグリットの絵のような雰囲気です。娘のアンナは、世界をさかさまにひっくり返し、パパを空の奥深くにつれ出しました。父と娘はさかさまの世界を旅します。二人はどんな旅をつづけていくのでしょう。ホーレ・ワールド全面展開のページが続きます。そして最後の見開きには、青空にふるイチゴの実。北欧の透明感と独特の世界観にみちた、空とぶ絵本の登場です。(7・31刊、A4変型判四八頁・本体二〇〇〇円・三元社) |
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