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評者◆伊達政保
こうした演劇を上演しないで何の演劇か――乗りに乗っている脚本家・演出家・俳優シライケイタの『恭しき娼婦』『THE DARK CITY』
No.3381 ・ 2019年01月01日




■ここ数年、乗りに乗っている脚本家・演出家・俳優のシライケイタ。彼が関わる作品を続けて観た。一つは新宿梁山泊『恭しき娼婦』(J・P・サルトル作、シライケイタ上演・台本、金守珍演出、サヘル・ローズ主演)。戦後すぐに初演されたこの戯曲、アメリカ南部に流れてきた娼婦が、疑われた黒人を庇うも議員の圧力に抗し切れずに売り渡してしまい、黒人はリンチされてしまうという内容。高校時代、公民権運動が高揚していたころ、この戯曲を読み、内容に釈然としなかったし、当時『アルジェの戦い』などの映画を観たので、サル卜ルはアルジェリアをアナロジーしたと考えた。よってオイラ記憶を辿るまで、この戯曲はアルジェリア人差別の話だとばかり思い込んでいたのだ。
 シライは設定を大胆に書き換え、日本の本州西端の地方都市、第二次朝鮮戦争で多数の難民が朝鮮半島から流人してきたとする近未来だ。地方ボスの国会議員は甥の殺人を正当防衛とするため娼婦のサヘル(役名も同じ)に、別の朝鮮人が先に暴行したと偽証を依頼する、あなたがこの国に迎えられるようにと。議員の息子(申大樹)はサヘルに滔々と語る。祖先は満洲国を創り、敗戦後この国を建て直した。大叔父は憲法を書き替え、この国を戦争の出来る国にしたと(まさに安倍晋三一族だ)。だが朝鮮人は何をしたか、この国に災いをもたらしただけだと。自警団による朝鮮人狩りが行われていく。その中でサヘルは叫ぶ、この国は25年間、私に何をしたと。役と本人の実存が重なる素晴らしい演技であった。
 脚本と演出によりアジプロ演劇と見紛うばかりの作品となっている。あまりに直接的すぎるとの批評も聞こえてくるが、こうした演劇を上演しないで何の演劇か。危機感がなさすぎる。
 もう一つは自ら代表を務める劇団「温泉ドラゴン」の『THE DARK CITY』(シライケイタ作・演出)。昭和23年埼玉県本庄市(当時は町)で起こった「本庄事件」を題材にしている。暴力組織の地方ボスが議員となって新たに発足した自治体警察を牛耳り、その癒着を追及した朝日新聞記者を殴ったことに端を発した、ジャーナリズムによる自治体民主化闘争を描いている。朝日と読売の立ち位置など、現在のジャーナリズム批判を思わせるが、実際の歴史はそう甘くはない。GHQに屈し新聞放送単一労組の産別闘争から脱落した朝日新聞は、GHQの命令で暴力追放キャンぺーンを展開したのだ。同時期に闘われていた東宝争議には「来なかったのは軍艦だけ」と言われる弾圧が米軍も加わり行われた。本庄の市民集会もGHQ臨席の下に催されている。こうした事実にはなぜ触れなかったのだろう。







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