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評者◆重延浩
「独創」とは何か――食べ物や飲み物、そしてテレビなど、すべての「作り手」に共通する思いとは
贈りもの物語――大切なひとを幸せにする逸品とお手紙
重延浩
No.3062 ・ 2012年05月19日




 テレビ番組「遠くへ行きたい」、「世界ふしぎ発見!」などを手がける番組製作会社・テレビマンユニオンの会長を務める重延氏は、社としてお中元・お歳暮を贈る際、必ず自ら手紙を書いて添えている。本書はその手紙と、品物の紹介を採録したものである。氏の手紙には、贈りものとして選んだ品がどういうものであるのか詳しく書いてあるが、読んでみるとこれが通り一遍の紹介や宣伝などとはまったく異質なものであることに気づく。
 「贈りものに選んだものをつくっている人と電話で話しているうちに、その方々が持っているものが見えるようになってきます。そうすると、手紙を書くためではなく、とても興味がわいてくる。どのようにものをつくっているのか、時間をかけて聞いていくと、話がお互いに深くなってくる。私も作り手ですから、やはりどこかが独創的でないといけないと思っています。それがどれだけ大変かわかっていますから、ものづくりの具体的な工程に非常に興味があります。話が行き着くと、お互いの精神が一致してしまう。すると人生観の話になったりして、延々と話してしまいます。その内容をノートにメモしているんですが、二十ページくらいになります」
 食べ物や飲み物をつくるときにも、テレビ番組をつくるときにも、ある種の「手仕事」が介在する部分がある。
 「手仕事を大事にしている職人さんもまだたくさんいますが、社会が変わってきています。本書でも、手仕事の職人芸をただ賞賛しているわけではありません。使っていた食材が入らなくなったりすると、それに近い質のものを探してこざるをえない。それは一種の妥協ですが、社会に対応する一つの道です。機械を導入する職人さんもいらっしゃるわけですが、すると機械と手作りの関係というものをお考えになります。あるところまでは機械化するけれど、あるところからは手作りでなければならないとわかる。そういう、新しい時代の新しい職人さんが生まれています。それが私には面白かった。そうした時代に私たちは生きていかなければなりませんが、できるだけ究極のものに近づけたいという思いが大切な時代だと、逆に教えられました。さらには、デジタル化がすべての結果を出していく時代に入っています。あるデジタルのプロが言っていたことですが、デジタル化とはすべてを標準化していく作業であると。神は昼と夜はつくったけれど、夕方はどうかと。夕方の微妙な色の変わり方はデジタルでは絶対につくれないとおっしゃっていました。それと同じレベルで、食べ物の作り手もいる。私たちも映像の作り手で、世界は違いますが、同じレベルで考え、悩み、そして新しいものをつくっていくということは、ものだけでなく、自分をつくっていくようなことでもあるんです」
 食べ物は、食べたらなくなる。放送も、今はオンデマンドなどがあるとはいえ、一回放送されたら基本的に終わりだとすれば、食べ物と放送には、似たところがあるのだろうか。
 「「なくなる」というのはとても人間的だと思います。基本的に、つくったものは、みんななくなっていきます。人間だってそうです。テレビジョンの場合も、一瞬の時間を輝きのあるものにする、そのライブ感を大切にする職人がいます。すると、記憶が残ります。記憶とはある種の想像力で、そこからまた新しい何かを生み出す能力を秘めている。素晴らしい記憶を残せれば最高だ、と思うのが、すべての作り手に共通する思いではないでしょうか。それはとても貴重なもので、人間らしいことだと思います」
 近々、久しく会っていない友人に会う予定がある、などというとき、本書に掲載されている品物を携えていく、というのはなかなかオツなことではないだろうか。読者それぞれの「贈りもの物語」が、そこからまた始まっていくと思う。

▲重延浩(しげのぶ・ゆたか)氏=テレビマンユニオン会長・ゼネラルディレクター。1970年に28歳でテレビマンユニオン設立に参加し、1986年に同社代表取締役社長に就任。平成16年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。







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