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評者◆伊達政保
まさに沖縄の現在を撃つ作品――真藤順丈著『宝島』(本体一八五〇円・講談社)
No.3392 ・ 2019年03月23日




■この2月、沖縄辺野古基地建設の是非を問う県民投票が行われ、投票率は50%を超え、反対票は70%を上回り、43万票を獲得した。これは昨年の沖縄県知事選で、基地建設反対を訴えて勝利した玉城デニー氏が獲得した、これまでの知事選最高の得票数39万票を大きく上回るものだった。このことは再び沖縄の民意が、辺野古基地建設反対を表明したということなのだ。
 さて、昨年12月の基地建設への土砂投入強行から、2月の県民投票という状況の中、1月に芥川・直木賞が発表された。その中継を見ていたが、芥川賞選考委員が選考経過を説明している中、直木賞が決定し受賞作が張り出された。その途端なんと彼は芥川賞そっちのけで直木賞受賞作について語り始めたのだ。それが真藤順丈著『宝島』(講談社)である。沖縄の戦後を舞台にしたこの作品は、まさに沖縄の現在を撃つものともなっていたのだ。
 山田風太郎賞を受賞し、続いて直木賞候補作となった時点で、オイラこの作品に直木賞を取って欲しかったが無理だろうと考えていた。なぜなら芥川・直木賞選考委員が、現実のシビアな政治的課題に触れるような作品を選出するとは思えなかったからだ。しかしさすがの選考委員たちも沖縄の現状を見て見ぬふりをすることが出来なかったのだろう。この状況の中あえてこの作品を選んだに違いない。それが先の芥川賞発表の場面での選考委員の態度に現れたのだと思う。
 さて、この『宝島』という小説、戦後の米軍基地から生きるために物資を椋め取る人々「戦果アギヤー」の話から始まる。このグル一プの中から沖縄ヤクザが形成される。コザ派と称されるヤクザの親分の喜舎場朝信(ターリー)だ。那覇では空手道場の若者たちが賭博などの用心棒となり那覇派を形成、又吉世喜(スター)が首領となる。彼はこの物語の中でも重要な位置を占める。過酷な米軍統治に反抗する政治家瀬長亀次郎など、実在の人物と主人公たちが虚実絡み合いながら物語は、米軍犯罪や軍用機墜落などの実態を明らかにしながら、クライマックスのコザ暴動に向かっていく。ありゃ、復帰を控えて大同団結した沖縄ヤクザ旭琉会で、又吉スターと共に二大巨頭で暴動に積極的に参加したといわれる山原派?(旧コザ派)首領の新城喜史(ミンタミー)が出てこない。代わって又吉が現場にいる。主人公たちの中に分解されたのだろうか。
 この小説、細かいところではオイラ不満があるが、沖縄の本屋では売り切れが続きなかなか手に入らなかったと沖縄民謡の巨匠大工哲弘氏から聞いた。本の最後はこう結ばれている。「そろそろほんとうに生きるときがきた――」







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