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評者◆伊達政保
メチャクチャな映画だが、現実の方がもっとメチャクチャだ――才谷遼監督『ニッポニアニッポン――フクシマ狂詩曲』
No.3395 ・ 2019年04月13日




■東日本大震災・福島第1原発事故から8年。3・11はお題目となり、皆オリンピック騒ぎに巻き込まれ、震災被害など何も無かったかのように浮かれている。しかし、2万人以上の死者・行方不明者を出し、現在でも5万人以上が避難生活を強いられている現状は何も変わっちゃいない。土地の嵩上げなど、ハード面の復興は進んでいるように見えるが、オリンピック工事に資材や人手を奪われ進行は遅れている。そうした遅れもあってかコミュニティが存続出来ずに、誰もそこには戻ろうとしない。莫大な税金を投じ、結局はゼネコンが儲けただけだ。
 原発はその事故処理も遅々として進まず、40年後の廃炉目標もその見通しすら立ってはいない。一方、高線量の帰還困難区域は手付かずのまま。大量の除染土は田畑を覆い尽くし、名ばかりの中間貯蔵施設では処理が出来ないと、なんと除染土を再利用するという。環境省の役人は内々の会議で、日本全土を被曝させればよいとまで言い放つ。
 こうした状況の中、前作『セシウムと少女』でファンタジーとブラック・ユーモアを結合させ、原発批判の映画を撮った才谷遼監督がムチャクチャな映画を作り上げた。『ニッポニアニッポン――フクシマ狂詩曲』である。実写とアニメーションが入り交じるミュージカル仕立てと、カゲキなブラック・ユーモアで福島の被災地の現状と行政、東電、国を、徹底的にからかっている。あまりにも顰蹙を買いそうだからと、配給会社は全て腰が引けたそうだ。
 話は会津若松市から被災地の楢穂町(架空の町)の特別震災広報課ヘ課長(隆大介)が出向してくるところから始まる。上司の助役?(寺田農)は被災地を案内しながら、この町は今後40年間廃炉の最前線となり予算はどんどん使い放題。たとえ住民が戻らなくとも作業員と関連業者で町は賑わうだろうと言う。ちらりと写る町の広報ポスターには「ならほ町」の文字、棒一本取れば「ならは」じゃないか。楢葉町は怒るだろうなあ。町民の一人は、隣村の村長は村民に帰村しろと言うが、その村長は自分の孫は帰らせないでいると語る。飯舘村のことだろう。課長は助役から宴席に出るように言われ、驚きの光景を目にする。首長、役人、業者、電力会社幹部、国家官僚、議員などが集まり、原発・廃炉・除染・補助金利権を祝い大宴会。課長はこれではいけないと叫ぶ。
 たしかにメチャクチャな映画だが、オイラには現実の方がもっとメチャクチャだと思う。出演は宝田明、山谷初男など超豪華。発見の会から牧囗元美、飯田孝男、月蝕歌劇団から慶徳優菜が出ているのも嬉しい。ジンタラムータの演奏が大宴会を盛り上げていた。







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