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評者◆伊達政保
最後の大瀑布のスぺクタクルは圧巻――水族館劇場の新宿・花園神社公演『Nachleben 揺れる大地』
No.3400 ・ 2019年05月25日




■水族館劇場の新宿・花園神社公演も今年で三年目。『Nachleben 揺れる大地』と題された芝居のテ一マは満洲、当初の題は『大地の牙』と聞いていたが、何故か変更された。船戸与一の大作『満洲国演義』全九巻の第六巻は『大地の牙』と題されている。当然、船戸氏とオイラの共通の友人である東アジア反日武装戦線「大地の牙」を念頭に置いたものであった。それで題名を変えたのかなあ。そして今回、劇の主題歌を頭脳警察のPANTAが書いている。今年は頭脳警察結成50周年で、その記念すべき1stライブを休演日にあの大テン卜で行ったのだ。
 頭脳警察とアングラ芝居との関係は意外ではない。1972年に旗揚げした劇団、「不連続線」の『にっぽん水滸伝』作・演出菅孝行の音楽を担当したのが頭脳警察なのだ。以後、水滸伝シリーズ、「いえろうあんちごね」シリーズと劇伴音楽を担当していた。『頭脳警察 music for 不連続線』として現在CD化されている。オイラ旗揚げ時から不連続線の芝居を殆ど観ていた。その時にPANTAと知り合ったのだ。そうそう後になって月蝕歌劇団にも主題歌として寺山修司の詩に曲を付けた「時代はサーカスの象にのって」を提供している。今回のライブに菅孝行氏も来ていたなあ。
 さて芝居だ。例によってテント外の前芝居から始まる。満洲の農民、撫順炭鉱の坑夫、苦力、海軍陸戦隊員、愛新覚羅顯 こと川島芳子、信州の製糸工場の女工そして満蒙開拓団、夢野久作「氷の涯」のニーナ、満鉄の鉄道技師、謎の華僑老婆、黒竜江の精霊、開拓義勇軍の加藤完治、壇一雄、「夕日と拳銃」の伊達麟之助(実名は伊達順之助)、夕日将軍・石原莞爾、出るわ出るわ、まるで満洲国というオモチャ箱をひっくり返したようだ。前芝居最後に全員でPANTA作曲の主題曲が「大地の牙を胸に抱いて……」と歌われる。ありゃ、4月から始まった倉本聰脚本の昼ドラ『やすらぎの刻~道』は、主人公の脚本家が以前に終戦記念ドラマで満蒙開拓団の姉妹の話を書くが、製作中止となるとこから始まっていた。
 さて本編、オリンピック前、現代の徴用工である中国人労働者が働く工事現場と満洲国哈爾浜の大観園と時空を往還して展開する。満洲国の開発者で安倍晋三の祖父岸信介と満映理事長甘粕の阿片利権、そして阿片の里見機関と現在の電通との戦前戦後の闇の関係が踏まえられ、現在に満洲国を蘇らせようとする鉄道技師が暗躍する。新幹線だって満鉄出身の十河総裁が完成させたのだ。それに抗う切り棄てられた民は時空を超えて立ち向かっていく。しかし高取英だったらどうしたかなあ。最後の大瀑布のスぺクタクルは圧巻。







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