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評者◆ベイベー関根
バロン吉元、さらにバリバリ活動中!
柔侠伝 上・下
バロン吉元
No.3401 ・ 2019年06月01日




■ここ近年バロン吉元の再評価がめざましい。喜ばしいのう! 弥生美術館ほか数々の展覧会(トークゲストの顔ぶれの豪華さたるや!)、『バロン吉元 画侠伝』や『男爵』といった画集の出版、そしていよいよ満を持しての代表作『柔侠伝』上下巻刊行だ! 平成の世にもったいないくらいの快挙にほかならぬ!
 え、「バロン吉元って誰?」とな? この不心得者めが!(あれ、なんかキャラが変わってきたか?)
 貸本時代からマンガ家として活動開始、横山まさみちのアシスタントを務めながら、セツ・モードセミナーに通い(ついでにいうと、武蔵美西洋学科中退にして柔道黒帯、この絶妙なバランス感覚こそ、氏の真骨頂なり!)、確かな画力とダイナミックなストーリーテリング、ユニークきわまりない人物造形と市井の人々を正面から見つめる視線をもって、1960~70年代の劇画シーンを支えたお方じゃ! 『柔侠伝』は、5代にわたる柔道家の波乱万丈の生き方を綴る大河シリーズの第1作。1970年から連載が始まったこのシリーズは、『昭和柔侠伝』『現代柔侠伝』『男柔侠伝』『日本柔侠伝』『新柔侠伝』と、題名と主要登場人物を替えて書き継がれ、なんと100年以上の時をまたぐ驚くべきサーガへと変容していった。今回新編集で刊行された『柔侠伝』2巻は、合わせて約1000ページ+束幅75ミリにして、本体定価は各1300円! や、安すぎる!
 柔術家・柳勘九郎は、講道館柔道創始者・嘉納治五郎に敗れた父・秋水の無念をはらすべく上京する。長屋の立ち退き問題がもつれたことからヤクザの大親分を斬ってしまい、監獄に送られた勘九郎は、出獄後、満州に渡って馬賊となる……というあたりまでが本作だが、今から続刊が待ち遠しいわい!
 オールドファンにいわせると、『柔侠伝』は右からも左からも支持されていたってんだけど、要はふつうの人の倫理観に添っていたってことなんだろうな。見習わねば! 倫理観のみならず、頭でっかちな小説とかにありがちな観念的なところが全然ないのもいいよね。観念が具現化したキャラクターではなく、肉体をもつキャラクターが筋を通したりブレたりしながら、矛盾に満ちた時代の中を生きていくという……。
 しかし、やっぱなんといっても絵の魅力だろうな。筆を使ったタッチはちょっと前なら泥臭く感じられたかもしれないけど、今は一周して素晴らしさとしてストレートに伝わってくるんじゃなかろうか。単に躍動的だとか正確だというだけでなく、いわゆる上手さにとらわれない自由さが氏の身上なんだろうな。
 現在バロン吉元は、マンガよりも絵の制作に重点を置いた活動をしており、そこでは俗世を超越した傾奇者の美男美女を描いた曼荼羅的な作品が多いんだけど、どれもエロくてパワフル、そして遊び心に溢れてる。貸本時代からの超ベテランだってのに全然枯れてない、リスペクトっす!







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