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評者◆秋竜山
夫婦生活は脳生活である、の巻
No.3421 ・ 2019年11月02日




■夫婦とは何か。正しい夫婦のありかたとは何か。考えてみる。もちろん昔の夫婦のこと。今の夫婦は、あまりにも現実すぎて興味もない。昔というと、自分が子供の頃の父や母の時代の、隣近所の夫婦であり、あーであったとか、こーであったとか。想い出してみると、なつかしくもある。切りがない。そして、現代夫婦とはあきらかに違う。毎日、口喧嘩の日課であった。我が家の夫婦というと父や母であった。父や母はちっとも面白みがなく、つまらない。他人の夫婦ほど面白いものはない。「馬鹿」と、亭主がいう。「馬鹿とは何よ」と、女房がくってかかる。「馬鹿だから馬鹿といったんだ」「何よ〓 どこが馬鹿よ。あんたこそ馬鹿じゃないの」「お前が、馬鹿なんだよ」「あんたが、馬鹿なのよ」と、いった実にくだらないやりとりである。そんなことを毎日、よく繰り返して行えるものである。女房がいう。「あんたってヒトは、怒ってばかりいるから、どんどん馬鹿になっていくのよ」「どっちが」「あんたに決まっているでしょ、馬鹿」なんてことを、いい合っている内に一日が過ぎていく。もっとも、これが夫婦の会話と置きかえてもいいだろうけど。他に何があるというのだ。仲が悪いというものではなく、もしかすると仲がよすぎるのかもしれないと思えてくる。
 加藤俊徳『脳が知っている 怒らないコツ』(ゴマブックス、本体一二〇〇円)では、
 〈家族や同僚と意見が食い違っただけで、ヒステリーを起こして怒鳴り散らしたり物を投げたりする人もいます。「怒りグセ」が問題なので自覚しにくく、怒れる自分を改善するきっかけをつかみにくいということです。〉(本書より)
 夫婦の場合は、「怒りグセ」というよりも、「口喧嘩グセ」といったほうがいいかもしれない。何かいわれたら、必ずやり返す。一方的であったり、それに対して黙りこくってしまうという夫婦間というものは、不自然といわねばならないだろう。
 〈家族や職場など、あなたが長い時間を過ごす場所に「怒りやすい人」がいると、その人が持っている脳の「怒り回路」を、あなたの脳がコピーしてしまうことがあります。これは、脳が頻繁に接している現象を記憶しやすいからです。また、記憶したものは意識に表出しやすく、意識に上がってきたものに脳は親近感を覚えます。親近感を覚えると、脳がその対象をさらに模倣します。こうしたことを繰り返しながら、脳は成長を続けていくのです。これは、身近にしょっちゅう怒っている人がいると、脳が親近感を覚えて、怒りを模倣してしまう、ということです。〉(本書より)
 夫婦にもいえそうだ。似たもの夫婦というものがそうかもしれない。夫婦というものはお互いの脳が愛情の上に成り立っているのだろう。女房を愛しているということは、女房の脳を愛しているということである。愛しているなんて言葉には出さないが、亭主の脳を愛しているということだ。お互いの心というのは、お互いの脳ということである。相性の合う脳ということである。相性が合うから、同じ屋根の下で何十年も一緒にいられるということだ。夫婦生活というのは脳生活ということになるのである。お互いに黙って、しげしげと相手の頭をみたりして。不思議なものだと思ったりする。それが夫婦というものである。「それにしても、お前の脳は」「何いってんのよ、あんたの脳こそ何なのよ」。







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