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評者◆秋竜山
「エーー、本日は」、の巻
No.3424 ・ 2019年11月23日




■二人の男が話していた。
 「スピーチの、むずかしさは、最初と最後がむずかしい」
 「たしかに、中身は、どう話そうと、それなりに考えればいいのだが」
 「最初と最後は、決まり文句のようなものがあって、それをおぼえればいいのだが、不思議とおぼえられないものだ」
 スピーチが苦手だという人の共通の悩みでもあるようだ。最初と最後の文句さえなければいいのだが、それをとったらスピーチにならないだろう。それでも、スピーチ上手がいる。生まれながらにそなわった天性ではないかと思えてならない。彼は上手になるために特別に勉強したわけでもなく、そのような努力はまったくしてない。それでいて、みごとにスピーチする。親せきの中に必ず一人ぐらいはいるものだ。だから彼は、特に通夜とか葬儀とか、それらのすべてのスピーチをまかされる。彼以外のスピーチは、しどろもどろで、ヒヤヒヤさせられるものである。
 生島ヒロシ『口下手な人のためのスピーチ術』(ゴマブックス、本体一三〇〇円)は、口下手な人が買う本だろう。スピーチの最初の出だしの第一声は、まず誰もが切り出すのは、「エーー」であるだろう。必ず、「エーー」を、いう。これをいわないと話が始まらない。「では、始めます」と、いうのも変だし、変なセキばらいもよくない。いろいろ考えてみると、「エーー」というのになってしまう。つまり、これから始めるスピーチの「ヨーイ・ドン」のようなものだろう。「間」ともいうものだ。その後に続くのが、これも決まり文句のようなものである。「本日は……」である。「エーー。本日は……」となる。本書における〈基本スピーチ例〉を、ひろい読みすると。「エーー」は、絶対になくてはならないものだろう(本書には、そう書いてないけど)。
 「皆様、本日はご多忙にもかかわらず……」と、いうことになるのではないだろうか。誰も、ご多忙とは限らず、ヒマでヒマで……という人もいたりするものだ。だからといって、「ヒマをもてあましていらっしゃるところを……」なんて、いったら大変なことになるだろう。「ご多忙中にもかかわらず……」が、私は一番よいのではないかと思う。
 「本日は、お忙しいところを……」と、いうのもあるが、ご多忙と同じようなものだろう。「本日は、寒風吹きすさぶ中……」と、いうのもある。「大雪の中を……」と、いうのと同じか。「雨の中を……」も、同じか。「僭越ながら、ひと言ごあいさつ申し上げます」とやってから、続けて「本日は皆様お忙しい中を……」と、なる。「本日は、私のために……」などというのもある。「本日は」が一番多いのではないだろうか。「エーー」とやると、どうしても「本日は……」と、いいたくなるものである。
 〈「短くまとめる三つのテクニック」
 とっさのスピーチの組み立て方は、文章の構成法と同じで3つに分けて構成するといい。
 ①序論(出だし部分)
 ②本論(主要なテーマ部分)
 ③結論(締めくくり部分)
序論と結論はできるかぎり簡潔にするといい〉(本書より)
 短いスピーチには、四コマ・マンガ的スピーチがいいだろう。四コマ目にはオチがある。笑わせればいいというものではない。泣かせられることを望んでいる人もいる。「本日は、誠にありがとうございました」と、いわれて文句をいう人はいないだろう。







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