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評者◆ベイベー関根
遠く、静かな、必ずやってくる未来。
No.3424 ・ 2019年11月23日




■むかしむかし、渡辺和博という漫画家がおったげな。その人の描いた「ロボット情話」では、人間そっくりのロボットが人間と恋したり、差別に遭ったり、あげくに壊されちゃったりするもんで、読むものはみな涙したものじゃ……。
 それからあっという間に40年。AIとかシンギュラリティをめぐる議論や、原発事故以降の放射性物質の半減期が示す新しいタイムスケールを前に、われらが島田虎之介先生がかましてくれたぜ、『ロボ・サピエンス前史』上下! 
 シンプルで流麗な線、余白を生かした構図、どこか懐かしいキャラクターの造形、ハイコントラストすぎてグレーの存在する余地がない世界。とっつきやすさと近寄りがたさが同居する不思議な雰囲気の中、おおよそ3つの物語が並行して進んでいく。
 誰にも所有されず、ヒトの依頼に応え続ける「自由ロボット」、伊藤サチオ。半永久的に活動し続ける超長期耐用型ロボット「時間航行士」のトビーとクロエ。放射能が無害化するまでの25万年もの間、施設管理に従事し続けるマリアaka恩田カロ子。
 サチオは旅の果てに思いがけない自分の過去に出会い、ミッションに失敗して宇宙空間に放り出されたクロエとトビーは第2のミッションに取り組む。人間やロボットが訪れなくなった後に生き延びた(?)カロ子は、地球を捨てて別の形態に移行したロボットたちと合流しようとする……。
 ヒトではなく、ロボットの視点がフィーチュアされることで、かえってヒトにとって何が大切か、何が問題かといったテーマが浮かび上がる。ちなみに、このロボットたちには心らしきものはあるみたいなんだけど、心とは何かと正面きって問われはしない。まあ、どうでもいいんだろな。
 ともあれ、何十万年先に思いを馳せる想像力は、ちょっと人間わざとも思われん。でも、「スゴいですね」ですますわけにもいかねえんだな。人間は原子力発電所を作っちゃったでしょ。でも、そこで働いている人のうち、放射能が無害化するまでの時間についてきちんとイメージできてる人なんて、まずひとりもおらん。放射能はたぶん人類が滅亡した後まで残るだろうし、ねえ……。
 シマトラ先生はたぶんその責任を、人類のひとりとして、自分なりに担おうとしてるんだと思うんだよね。果てしないように見えて、いつか必ず来る刻限を考えるために必要だったのが、ロボットやAIという設定だったんじゃねーかな。
 あと、最後にロボットたちは、全銀河にあるかたちで広がっていこうとするんだけど、それが「あの世」とか「霊」に近いのが個人的には面白かったっす!







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