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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3426 ・ 2019年12月07日
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絵本を読み終わればあなたもマジシャン
▼りっぱなマジシャンへの道――マジック入門絵本 ▼マット・エドモンドソン 文/ギャリー・パーソンズ 絵 子どもはほんとうに手品が好き。ちょっとしたマジックを自由にあやつることができれば、クラスの人気者になることまちがいなし。学芸会や遠足やお泊まり会はもちろんのこと、授業のあいまの休み時間に手品を見せれば、あなたのまわりに輪ができます。問題は手品のテクニックにあります。友達の驚き具合や反応をたしかめながら、見せ方を考えたり、あらたな技を身につけたり、日夜練習にはげんでいます。そんな子どもたちにぴったりなのが、“家族みんなで楽しめる! 最強のマジック入門絵本”と銘打たれたこの本です。 とにかくマジックが好きで好きで仕方がない主人公のエリオットは、寝ても覚めてもマジックに夢中です。頭のなかはいつもマジックのことでいっぱい。さもありなん、エリオットのひいひいおじいちゃんは、数々の伝説がまことしやかに語り継がれている、「軌跡の魔術師デクストリーニ」とよばれた世界一のマジシャンで、エリオットはこのひいひいおじいちゃんのような偉大なマジシャンになりたいと、いつも考えていたのです。 なにかヒントはないだろうかと、家の本棚を眺めていたら、一冊だけマジックの本がありました。タイトルは『消去の呪文、呼び出しの呪文』。むむ、これはマジックの基本中の基本である呪文のことを書いた本ではないか! エリオットが埃っぽい革表紙を開いてみると、本の前半はまっしろ。むむ、この大事な本で、消去の呪文を試してみたのだな。でも、どんな呪文かわからないじゃないか……。 はてさて、困り果てたエリオット。そんな彼は、本棚のまえで一つのヒントに気づきます。そこから、偉大なマジシャンに出会う旅が始まるのです。 エリオットの旅を追っていく読者の私たちも、物語のなかでじっさいに手品をすることになります。マジックに必要な材料は、すべてこの絵本に入っています。ワードマジック、スピンマジック、折り紙マジックと、読み終わればあなたもりっぱなマジシャン。物語を楽しみながら、七種の手品がおぼえられる“からくり絵本”を、どうぞ開いてみてください。(17・9・30刊、30・5cm×24cm四二頁・本体二九〇〇円・あすなろ書房) おおかみとケムシのクリスマス物語 ▼あいたくて あいたくて ▼みやにしたつや 作・絵 もうすぐクリスマスです。「ねえねえ、クリスマスには、ふしぎなことがおこるんだよ」「ステキなねがいごとも、かなうんだよね」。そんな会話が、世界中から聞こえてくる日です。人気者にも、そうでない者にも、きよしこの夜が訪れます。 絵本好きにはおなじみの、みやにしたつやさんのこの絵本の主人公は、いじわるばかりする、嫌われ者のおおかみ。みんなに嫌われているので、ともだちもいませんし、いつも一人ぼっちです。強がっているけれど、やっぱり一人はさみしい。 そんなある日のこと、こぶたを「ガオー」とおいかけていたおおかみは、ケムシを踏みそうになりました。ああきもちわるい、そばによるな! といいながらにげようとするおおかみに、ケムシがなみだをポロポロとこぼしながらいいました。 「わたしはみんなからのきらわれもの、だれからもあいされない……。あなたにはたくさんともだちがいるかもしれない。でも、でもね……わたしは、ひとりぼっち……」。 それをきいたおおかみは、ケムシをだきしめてこういったのです。 「お、おれも……ひとりぼっちなんだ……おれでよかったらともだちになろう。ずっとずっといっしょにいよう」。 こうしておおかみとケムシはともだちになり、たのしい日々をすごしました。ところが、ケムシはいなくなってしまうのです。また一人ぼっちになったおおかみは、クリスマスの日に、ケムシに会いたいといっしょうけんめい祈りました。 ねがいごとは、かなうでしょうか。ふしぎなことはおこるかな? 今年もクリスマスを楽しみにしながら、この絵本を読んでみましょう。(17・10・1刊、26cm×23cm二八頁・本体一二〇〇円・女子パウロ会) 離婚する親と子をともにサポートする本 ▼ココ、きみのせいじゃない――はなれてくらすことになるママとパパと子どものための絵本 ▼ヴィッキー・ランスキー 著/中川雅子 訳/ジェーン・プリンス 絵 「パパとママはりこんするの」 「りこんって、なあに?」 「おとなどうしはなしあって、いっしょにくらすのをやめましょうときめることなの。りこんすると、パパとママはべつべつのおうちにすむの」 そんな会話を親と子がする場面を想像してみてください。両親によって生まれ、育てられていく幼い子どもにとって、親が離婚するのはとても大変な経験です。この絵本は、主人公のこぐまのココが、親の離婚をどのように経験し、対処していくかを描いたものです。子どもが離婚を受けとめるのをさまざまな面からサポートし、心を軽くするための一冊で、すでに長く読みつがれているロングセラーです。 離婚話を聞いた子どもは、いま家族になにが起こっているのか、両親が別れたらどうなるのかを知りたい。だから、これからどうなるのか、いつどこで会えるのか、おじいさんやおばあさんとの関係はどうなるのかを、親はきちんと話さないといけません。夫婦げんかに子どもを巻き込んではいけない、大人どうしの話、親の怒りや悪口をきかせてはいけない、それよりも、これからの生活についてきちんと伝えることがだいじだと作者のランスキーさんはいいます。 この絵本には、子どもをサポートするための具体的なヒントやアドバイスがちりばめられています。とくに離婚する両親が忘れがちなのは、自分の正当性を盾に子どもを引っ張りあいしてしまうことです。子どもが両親のどちらともよい関係を築きながら、月日を重ねていくことがなにより大切であり、それぞれの親と過ごす時間を大切にすることだと。子育ての方法というのは服と同じで、年々子どもにあわなくなる、だから成長に応じてつくり変える必要がでてくるという指摘は、当事者である両親が必ず知っておかなければならないことだと思います。 子どもと親が、いっしょに離婚を乗り越えるのをサポートする。この本は、親と子がともに読むための一冊です。(04・5・5刊、20・2cm×21・6cm三六頁・本体一三〇〇円・太郎次郎社エディタス) 人気のない公園の公衆便所に響く声 ▼ゾッとする怪談えほん おいで… ▼有田奈央 文/軽部武宏 絵 学校や公園の便所に幽霊が出る……、そんな話を聞いたことがあるでしょう。薄暗くて、ひんやりじめじめしていて、いかにもおばけがでそうな場所ですものね。これは子どもの頃に、誰もがいちどは体験したことのある、怖い公衆便所のお話です。 この絵本のみどり公園の公衆便所も、そんな幽霊の出る場所の一つ。便所ができるまえは、そこに家があって、だれかがずっと一人でひっそりと住んでいたといいます。でも、いつ家がなくなったのか、公衆便所がいつできたのか、誰も知りません。 幽霊が出るといううわさが広まってからは、人が近寄らなくなりました。でも、せっぱつまった場合には、そうもいきません。「うぅ……。もう、がまんできない!」。とにかく用を足さなければと、トイレにかけこむ男の子がいました。 さて、男の子はどうなったでしょう。これは、ゾッとする怪談えほんです。そしてタイトルは「おいで…」。軽部武宏さんの絵が、なんとも不気味なリアル感をただよわせて読者をとりこにします。(9・30刊、A4変形判二四頁・本体一五〇〇円・新日本出版社) 広島への原爆投下を語り継ぐ絵本 ▼あやちゃんのひばくたいけん――あやちゃんの涙を忘れないで ▼西純子 文/鎌倉麻衣 絵 この本を書いた西純子さんは被爆二世で、広島で被爆した母がつづった文章をもとに物語を書いたそうです。絵本をつくろうと思ったきっかけは、二〇一一年の福島第一原発の事故で、原子力の恐ろしさを知ってほしいという一念から、広島への原爆投下を語り継ぎ、未来の子どもたちに平和の思いを伝える活動を始めました。 絵本の主人公のあやちゃんは三歳のとき、広島の爆心地から二・三キロのところで被爆しました。お母さんは爆心地から一・五キロのところで被爆し、家に戻ってきたものの、あまりの変わりように、あやちゃんは「お母さんじゃない、怖い」と言って泣き叫んだそうです。 「おかあさん/どこにいるの?/おにいちゃん/たいへんだよ/みんな/たおれているよ/みんな/みずをくれっていってるよ」 この絵本に収められた言葉です。ちょうどローマ教皇フランシスコが来日し、広島と長崎を訪れて、核廃絶を呼びかける演説を行いました。ローマ教皇は、あやちゃんが経験したような、被爆者のこうした無数の声を背に、メッセージを世界に向けて発したのでした。唯一の被爆国である日本が、このメッセージを足元から無にするわけにはいきません。いまこそこの絵本を開くときです。(10・20刊、B5判二一頁・本体一八〇〇円・竹林館) あのノルウェー民話が現代版でよみがえる ▼3びきのヤギのブルーセ プールでおおさわぎ ▼ビョーン・F・ロールヴィーク 作/グリー・モールスン 絵/さわきちはる 訳 3びきのヤギのブルーセのお話は、『3びきのやぎのがらがらどん』としておなじみのノルウェーの古い民話を、装いも新たな現代版にしたものです。ブルーセとは、ノルウェー語でうなり声といった意味だそうです。まあいってみれば、メエメエという具合でしょうか。この絵本は、その3びきがプールにでかける話です。 3びきが列になって、くさばへいこうとすると、丘のまんなかあたりで「プールランドまで200メートル」と書かれた標識を見かけます。3びきは、プールにはいるかどうかはわからないけれど、ちょっと見にいってみようと、プールランドにいくことにしました。だって、くさばにいくには、怖い悪者のトロルのいる橋をわたらなければいけないんだもの。 プールランドにいってみると、入場料は高いし、シャワーをあびないといけないし、海水パンツをはかないといけないしと、いろいろ注文が多くて、もうたいへん、たいへん。注文の多い料理店よろしく、やれやれ、ようやくプールに入れると思ったら、そこに待ち構えていたのは、ノルウェー民話でおなじみの、あの悪者のトロルではありませんか! プールでおおさわぎが始まります。いったいどんな話が展開していくのでしょうか、読んでのお楽しみです。(10・25刊、B4変形判四八頁・本体一八〇〇円・三元社) |
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