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評者◆凪一木
その26 ビル管の資格ランク
No.3427 ・ 2019年12月14日




■今、私の勉強している通称「ビル管」と呼ばれる建築物環境衛生管理技術者試験の難易度について書く。
 世の中で言うと、S級と言われる国家公務員(総合職試験)、司法試験予備試験、弁理士、医師などがある。このクラスの資格は、ビル管には不要である。では、司法書士、不動産鑑定士、国立国会図書館職員などのAクラスは「ビル管理」にあるのか。
 ある。電気主任技術者一種(電験一種)とエネルギー管理士だ。だが取得しても業界内では認められるが、世間では歯牙にもかけられないであろう。電験一種は平成一八年で二・三%の合格率、翌年も二・六%と、基本奇数偶数年で凸凹の割には、凸凹が少ない。世の中的には、「年収一〇〇〇万円も夢ではない」という言われ方のレベルであり、それがどの程度のものかは、仕事の大変さと気楽さなどを天秤に掛けて、自身で測るしかない。
 中小企業診断士、一級建築士、社労士(社会保険労務士)、気象予報士といったBランクに電験二種が位置する。英検一級もこのレベルだ。
 では「ビル管」はどこかというと、その次のCランクである。都道府県職員(大卒)、行政書士、宅建士(宅地建物取引士)、一級建築士などがこのクラスで、アナウンサー生島ヒロシも持っている電験三種もここである。
 ビル管は、世間的評価では、電験三種よりも難しいことになっているが、実際私にとっては易しい。早稲田の政治経済学部や慶応医学部が、旧帝国大の北大や九州大の低い学部よりも難関のイメージだが、得手不得手による。科目数の少なさを考えると、私にとって難易度は低い。まして早慶の下位学部では、筑波大や横浜国立大より合格するのは簡単であろう。早大政経の受験科目は「外国語」と「国語」のほか、「地歴」もしくは「数学」と極小の幅ではない。電験三種はどうにも、「理論」「電力」「機械」「法規」と圧倒的に極小の世界であることを考えると、もっと難しく感じられる。まして「働きながら」の受験である。計算問題(一流大受験レベルの数学や物理・化学をはるかに超える)が解けなければ、ほぼというより完全にアウトだ。使い勝手や資格までの道のり、手続きなどを考慮すると、資格取得の難しさは、単に試験そのものの難しさとは異なる。
 相撲の新弟子検査での体格基準は「身長一六七センチ以上、体重六七キロ以上」であり、競輪騎手は、養成期間を経ず一発合格もありだが、「着衣や馬具を含めて五〇数キロ(最も軽いケースで四八キロ)」という厳しい条件があり、難易度は人によって違う。電験三種より東大法学部の方が合格しやすい人もいる。水泳と登山ぐらいの違いであろうか。
 ついでに書くと、保育士、二級建築士、教員採用試験などと同クラスのDランクに、「電気工事士」がある。ボイラーや冷凍は、国立大学法人等職員、造園施工管理技士一級、金属プレス加工技能士特級などと同じEランクである。危険物は、A~Eの下位に位置する番外のトップである。
 実は、ビル管には、偽物といえる資格がある。「ビル設備管理技能検定」という。「建築物環境衛生管理技術者」よりもむしろ「ビル管理士」をイメージさせる。ビルメンの総本山である「全国ビルメンテナンス協会」が実施している。そのビル管理士もどきは、A~Eランクの下の「番外ランク」に位置する。
 昔、お騒がせ商法で、『ツイスター』という注目の大作映画が公開された同時期に『ツイスター・インフェルノ』というまがい物の未公開映画がビデオレンタルされた。途端に、超高速レンタルされ大ヒットを飛ばした。当時現場にいた私は、勘違いして平気で借りていくユーザーの群れを見ながら、アホか? と思っていた。だが、その殆ど多くの客が実際に満足していたことを知る。世の中なんてそんなものか。そのうち、本家の『ツイスター』がビデオ発売されても、見向きもしない者までいた。本物とは何だ。
 ビル管には、二年間の実務が受験資格としては必要だが、そんなものは、ビル管をそこそこの現場で二年ブラブラしていればいい。試験の難しさは、一か月かじってみた感触では、登竜門と言われる「危険物」となんら変わらない。ただし範囲が広いので、絶対的な時間が必要だ。むしろ、「危険物」の次の段階の「冷凍」や「ボイラー」の方が、「ビル管」よりも難しいというのが私の感想だ。つまり問題の内容がさっぱり分からないのが、「冷凍」や「ボイラー」で、ではなぜ合格したのかというと、分からなくても解けるからである。文章のクセというか、「間違っているものを探せ」とあると、一問だけ、内容など分からなくとも「間違った書き方」をしている。ただそれだけのことである。
 ハッキリ言うと、ボイラーも冷凍も人材不足で、受験人気もなく、「もっと良い」「より受験者のためになる」参考書を書く人間も現れない。内容自体に魅力がないのと、その余禄(受験者数に鑑みて実売部数予測がつく)のなさが理由だろう。
 長野オリンピックのモーグルで、里谷多英が金メダルを取ったときに、解説をやっていた男が「ヤッター多英!」と絶叫する。その絶叫ばかりではなく、全体を通しての品のなさは、成績への素直な賞賛の気持ちに水を差した。つまりは、この業界(モーグル)には人材がいないのだと感じた。いずれ綻びが出るだろうと思っていたら、時代の寵児的扱いを受けた里谷はのち、言わずもがな問題を起こした。業界の脆弱な仕組みと奥行きの不足が、露呈したのだろう。会社の面接官やトイレを見て、その会社の白黒が分かるように、スポーツは解説者を見ればわかる。試験は会場だ。
 ボイラーは全国七か所の受験会場である。関東は東京ではなく、千葉の田舎の奥地にある。市原市能満二〇八九という住所である。白タクのような専用のぼったくりバスに乗せられて会場に着くと、地元のオジサンが、選挙の時に無駄に投票所にたくさんいるがごとくに、手持無沙汰で、昼の弁当と日当を目当てに、あまりにもド素人な接客、いや受験生対応をする。あとの六か所も故意なのか中心都市から外れている。地元では人気のない、もろに観光客目当ての、たまに食中毒事件を起こすような定食屋に似ている。
 ビル管の試験会場は、渋谷の青山学院大や池袋の立教大など、まあ「怪しくはない」という程度である。
(建築物管理)







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