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評者◆24wacky
「民主化」をキーワードにした旅
本屋がアジアをつなぐ――自由を支える者たち
石橋毅史
No.3429 ・ 2020年01月01日




■本が売れなくなった時代に、本屋はなぜなくならないのか? それどころか、本屋を始める人が後を絶たないのはなぜなのか? 本屋についての著作を多く出してきた著者は、今回その関心を東アジアへ広げる。それは図らずも「民主化」をキーワードにした旅となる。
 東京にいる台湾人の知人に「党外人士」という言葉を知っているかと、著者は尋ねられる。元々は台湾の民主化運動を担った運動家たちのことを指すが、権力による監視の目を掻い潜るように民主化につながる出版物を露店の本屋で売っていた人たちもまた、党外人士ではないかという。「あの人たちは、政治家でも運動家でもありませんでした。ただ生活のために本を売っていただけです。(中略)ああいう人たちがいたからこそ、いまの台湾がある。いま、小さな本屋をやっている人たちにも、あの露天商の精神は受け継がれているはずだ」と。
 「民主化」がキーワードになるのは韓国の小さな本屋を巡っての結果でもあった。光州、ソウル、釜山、それぞれが当然のように政治的スタンスを明確に打ち出す小さな本屋が紹介される。この過程で、著者は冒頭の問いに対するヒントを得る。「本屋は、その国や地域の自由を象徴する。人が自由を求める心をもつ限り、その役割を担う者は絶えることなく現れるだろう」(117ページ)と。
 今、東アジアのなかで最も自由が脅かされようとしている香港。「逃亡犯条例」に端を発した若者を中心とする大規模な民主化運動を遡れば、2015年の「銅羅湾書店事件」が記憶に新しい。中国共産党批判の本を発行、販売していた同書店の経営者、役員、従業員ら5名が失踪した事件は、そのうちの一人で店長だった林榮基氏が記者会見で、中国共産党による拉致・監禁だったと暴露したことで公となる。
 著者は台湾に潜伏中の林氏へのインタビューに成功する。「あなたは、本屋なのか、運動家なのか?」という質問に対し、林氏は答える。「私は運動家ではない。ただの、町なかの本屋です。でも、中国の人たちに自由になってほしいと思っている本屋ではある」と。
 政治的な自由を自分たちで勝ち取った(あるいは勝ち取ろうとしている)国の人たちと、その経験を持たない我が国との比較をするのは難しくない。「自由」という言葉の持つリアリティが違うということは、まず認識しておきたい。
 では、『街灯りとしての本屋』(雷鳥社)で紹介された、志を持つこの国の本屋たちはどうだろうか。彼女ら/彼らにも「自由」を希求するベクトルはあるだろう。意識している/していないにかかわらず、グローバル資本主義という名の「自由」の代償に対するカウンターとしての「自由」が。







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