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評者◆伊達政保
明るい闘争を次に伝えるだけではなく、明るく闘争を続けることも重要だ――『続・全共闘白書』(情況出版)と中村桂子著『学生たちの牧歌 1967‐1968』(幻戯書房)
No.3439 ・ 2020年03月14日




■オイラもアンケートに回答した『続・全共闘白書』(情況出版)。統計的には少しは意味があるのかもしれないが、なんだかなあ。これじゃ何が起こって何が行われたのか、個々人がどう思いどう行動したのかがさっぱり分からない。やはりその内容の価値判断は別として、個々人のオーラル・ヒストリーを後の世代へと語り残しておくべきだと思うのだ。でないと文献だけを恣意的に解釈した小熊英二『1968』のようなトンデモ本が大手を振ってまかり通ってしまう。
 新聞の書評欄で知った昨年出版されたこの小説集、中村桂子著『学生たちの牧歌 1967‐1968』(幻戯書房)は、その語り残そうとするオーラル・ヒストリーを、小説として表現したものと言うことが出来るだろう。なんと著者は中央大学文学部社会学専攻でオイラと同じ、五年先輩なのだ。この小説集、学生時代の作品から5年前の作品まで、女性自身の視点から回りの情況に向かい合うという姿勢は一貫している。白眉は表題作、中央大学・学館・学費闘争を題材とし、自分を含めた学生達の行動を朗らかに生き生きと描き出している。学生運動に陰惨なイメージを持っていた娘に読み与えるという作品の構成にも、70才を迎える今だからこそ語り残して置かなければならないという作者の思いがうかがわれる。
 68年中央大学学費闘争、66年早稲田大学、67年明治大学と負け続け、学費値上げ白紙撤回を勝ち取った最初で最後の闘争と言っていいだろう。都内の私大の授業料が年間10~4万円の時6万円に押さえられたのだ。まさに全共闘運動の萌芽がそこにあった。オイラ69年入学で、6月大衆団交後、再度バリケード・ストライキとまだまだ運動の蓄積は残っており、学費闘争を経験した先輩やOBから当時の話をよく聞かされた。
 小説にも描写されているが、ことあるごとに学部・学年・クラス・サークル討論が繰り返され、党派に属する人間もそうした平場の討論に加わり、結論を尊重するというスタイルが定着していた。他大学と違い昼・夜二つの自治会であり、昼間部自治会多数派のブントは学生大衆(他大学のノンセクトラジカル)党という側面も持ち、中大独立ブントの気風を残していた。出てくる顔触れに思い当たる人々も多い。味さん(三上治)などそのままだし、作者と当時同棲していた薬師神先輩(神津陽)は直接には出てこない。大衆団交の白紙撤回の場面には作者の多くの思いが込められている。指導部と大衆、理念と現実との落差など、その後の全共闘運動の問題点が凝縮されている。しかし明るい闘争を次に伝えるだけではなく、明るく闘争を続けることも重要だと思う。







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