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評者◆秋竜山
マスク元年とすべきだ、の巻
No.3445 ・ 2020年04月25日




■電車の座席で、だらしなく大口を開けて、よだれをたらして居眠りできた平和な時代があった。マスクで口をふさぐことになるとは。一にもマスク、二にもマスクである。マスクをしているかどうか、すぐ相手をみる。マスクが品切れとなり、ブラジャーでマスクをつくり、それで口をふさいでいる。一番ビックリしたのはオッパイだろう。新型コロナウイルスとの大戦争は、見えないコロナウイルスに接近しないことである。人に接近しないこと。人に接しない戦いだ。つまりは家から一歩も出ないということである。ひきこもり作戦だ。家の中に一人でひきこもっているということが大切になろうとは、ひきこもっている人たちからみると、しみじみと世の中はかわったなァ……と、考えざるをえないだろう。年号をマスク元年とすべきだ。井出洋一郎『知れば知るほど面白い 聖書の“名画”』(角川文庫、本体七二〇円)では、今、政府が国民にむかって協力をうながしていることがらと解釈すべきようなことが書かれてある。
 〈中世のキリスト教会は信者向けに七つの悪徳を「七つの大罪」として戒めた。それを並べると、「傲慢、貪欲、淫欲、憤怒、大食、嫉妬、怠惰」となる。ブリューゲルの連作版画で有名だが、教会の壁画や彫刻の装飾によく表されて、隣に「最後の審判図」がくると、十分効果的であった。〉〈一方キリスト教で定められた美徳は「信仰、希望、慈愛、正義、賢明、剛毅、節制」の七つで、いずれも仰ぎ見るばかりの世界だ。〉(本書より)
 新型コロナウイルスと人類との戦いは、中世のキリスト教会が信者向けに七つの悪徳を「七つの大罪」と戒めたものの中でいわれたものに答えがあると私は思うのである。
 〈ボッスの「七つの大罪と四つの終り」を見ると、「怠惰」とは、妻が正装して教会に出かけるのに、夫が火の入った暖炉の前の椅子で居眠りをし、ぐずぐず言って動こうとしない。つまりは自分の務めをさぼる罪。ブリューゲルの版画「怠惰」を見ると、やはりほとんどの人物が居眠りをして、寝ながらものを食べたり、悪魔に車で引っ張ってもらったり、起きていてもメランコリーに沈んで動こうとしない。〉(本書より)
 つまりが、外へ出て積極的に人と出会うということをしない、めんどくさがりであるということだ。家の中でゴロゴロしていることが唯一であるという人たちである。外へ出たくない人たちだ。新型コロナウイルス対策にはうってつけの人たちばかりである。一〇〇パーセント人前に出ない。もちろんマスクなど必要としない。
 〈(略)ブリューゲルの「怠け者の天国」の絵が、「怠惰」と「大食」の二つの図像を兼備している最適の例なのです。すなわち「食っちゃ寝」の最高の、いや最低の世界。〉(本書より)
 政府は外出せず家の中にいて、「食っちゃ寝」をしているようにと国民に協力するように呼びかけている。だったら国民は、いわれた通りにすればよいのである。ところが、それができない。あらためて「食っちゃ寝」ということは簡単にできるものではないことがわかった。最高で最低なことが「食っちゃ寝」である。新型コロナウイルスを殺すにゃ刃物もいらぬ、口をへの字にまげてればよい!!







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