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評者◆秋竜山
風刺漫画家の胸中、の巻
No.3455 ・ 2020年07月11日




■かつて風刺漫画の黄金期があった。今は時代性の問題か、その影すらない。どこかへ風と共にさりぬである。風刺漫画はその時代の世の中を漫画によって笑うのである。で、この世の中を漫画でもって風刺するとしたら、コロナということになるだろう。ところが、コロナ騒ぎはあまりにもザンコクであり過ぎる。コロナを笑うということは、勇気もいる。この新型コロナウイルスの拡大によって、世界中にギセイ者があふれかえっている。そんな中を笑いのめすことは可能だろうか。人間として、人情として。では、どーしたらよいのか。風刺漫画家は仕事であったとしても、沈黙して手をあわせているしかないのか。「アア……! わからない」。これが、風刺漫画家の胸中ではなかろうか。コロナは笑える問題ではないのではないだろうか。今は、そうとしか思えないのである。何十年かたって、そういう時代もあったとして、コロナを漫画化したとする。果たして風刺といえるか。〈世界のどこかの国。港の埠頭に伝説で有名な巨大なノアの箱舟がていはくしている。救急車が箱舟の中からけたたましくサイレンを鳴らして疾走していく。〉そんな一枚の漫画を描いてみた。描いてどうすることもないのだが。ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)『謎解き古代文明』(彩図社文庫、本体六九四円)では、
 〈旧約聖書(創世記6~8章)には、古代の地球を襲った大洪水について書かれている。人間たちが堕落し、地上に悪が増したのを目にした神は、人間だけでなく地上のすべての生きものを滅ぼすことを決意する。神はノアという心正しい男にだけはこのことを教え、大きな箱舟を造り、そこへノアとその家族、それに地上の動物をひとつがいずつ乗せるように指示する。ノアが箱舟を完成させると、神は地上に洪水を起こす。40日間、雨が降り続き、すべての山は水中に没した。地上の生きものは死に絶えた。ノアと彼の家族、それに動物たちを乗せた箱舟は海上を漂ったが、150日後には水が引きはじめ(略)〉(本書より)
 私がこの伝説を知ったのは中学生の頃であった。漫画雑誌のふろくとしての一冊の漫画本によってである。手塚治虫の書き下ろし作品であった。漫画のプロローグに、箱舟伝説があり、その後から本編が始まった。私がもっとも驚き、感動したのは、大都会に降り続ける雨の描写であった。まず、漫画でこれだけの雨の降るのを描いた作品があっただろうか。主人公の少年がビルの屋上からイカダで脱出するというストーリーであった。手塚作品でも、とても好きなものである。今でも。後年、漫画家になり手塚先生にお会いでき、お会いするたんびに、その感動したことを何回となく話したものであった。手塚先生は笑っておられたけど。そのことを思うと、コロナ大事件を手塚先生だったらどのようなストーリー漫画にするだろうかと思うのである。たぶん、現在の漫画家たちが描き始める時がくるだろう。黙っているはずがない。箱舟に乗って……。まさか!!







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