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評者◆秋竜山
何だ何だの真っ暗闇、の巻
No.3460 ・ 2020年08月15日




■本当に信じていいのか? 嘘か真か。「へー!! そーですか」と、しか答えられない。昔、奄美大島へある本の取材で行った時、地元の編集者と夜を待って、そこへ出かけた。道路を歩いていると、彼が、これからちょっと暗い所をとおりますが、という。暗いところは今も通っている。さらに暗い所というのか。「ハイ!! ここから十メートル程、暗がりに入ります」と、いうのだ。そして、その暗がりというのは、闇の中ということである。しかも、ここが、日本一の闇ということです!! と、説明された。歩いていて、お互いに声だけで相手をしることとなる。五名ほどいた。そういわれれば真暗闇である。まったく一寸先が暗くてどうなっているのかわからない。よく夜道を歩いていて、暗がりであったりするが、あたりは見えないが、感覚で見えるような気もしてくるものだ。ところが、そこはそんな感覚などきかない。どう暗いかというと、一歩も前進できない。手さぐりするのも恐怖である。「オイ!! 俺はここにいるぞ」と、いう声。その声に応じるように「俺もここにいるぞ」と、お互いに声を発するしか自分の居場所を相手に知らせる方法がなかった。一人が、「アッ!! 何だこれは」と、叫んだ。一斉に「何だ!! 何だ!!」と、声が発せられたが、それが、何であるかわからないのである。声は自分の眼の前でするような、遠くでするような、まったくわからないのである。そして、お互いに自分の名前をいい合ったのであった。
 布施英利『遠近法がわかれば絵画がわかる』(光文社新書、本体八八〇円)で、
 〈色彩の、すべての色を混ぜると何色になるでしょうか。絵具の色を混ぜてみると、どんどん暗い色になっていきます。そして最後は黒になります。では絵具という物質でなく、すべての「色」を混ぜると黒になる、ということになるのでしょうか。色は、絵具だけにあるのではありません。光にも色があります。光の色は、絵具の色と違って、混ぜると明るくなっていきます。つまり、すべての光の色を混ぜると、無色透明な光になるのです。これを白というなら、色は絵具(色材といいます)を混ぜると黒に、光(こちらは色光です)を混ぜると白になるということになります。つまり白と黒というのは、色の中でも「極限の色」ということができます。この白と黒が、遠近法の効果でいうと、白が手前に、黒が奥に見える、ということになるわけです。〉(本書より)
 絵具の色をどんどんぬっていくと、黒くなるということは子供の図画の時体験している。真黒の絵になってしまったことは経験ずみである。なぜ、そーなるのかまではわかるわけがなく、結局は失敗作ということで終わってしまった。光の色を絵具の色で表現していくわけだから、考えようによっては絵というものはむずかしくもあるわけだ。絵で夜の暗闇を描く場合は、はじめっから真黒の色を使わず、あらゆる色をぬりかさねていけばよいわけである。夜の暗闇は絵具のすべての色をぬりたくったものである。光の色も神がつくったもの、絵具の色も神がつくったもの、それを人の手によって絵とするわけだが、そもそも、絵というものは、そーいうものであると思うと、面白くもある。それが芸術であるということか。







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