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評者◆秋竜山
馬鹿になるとは、どーいうことか、の巻
No.3469 ・ 2020年10月31日




■馬鹿になるとは、どーいうことか。馬鹿になった人にお目にかかりたいものである。昔、母親が子供にむかって、「マンガばかり見ていると、馬鹿になるぞ。勉強しなさい」と、いったものであった。その、「馬鹿になる」であるが、果たして、マンガばかり見ていると馬鹿になるのだろうか。本当にそうだったとしたら、当時の子供たちは、マンガなど見向きもしなかっただろう。いわれ続けた子供たち(私も)の中で、マンガで馬鹿になった子供は一人もいなかった。勉強したからといって、利口になった子供もいなかった。馬鹿とは何か。利口とは何か。よくわからない。
 竹内一郎『やっぱり見た目が9割』(新潮新書、本体七〇〇円)では、
 〈ジャーナリストの大宅壮一氏がテレビの隆盛を聞いて「一億白痴化」という言葉を流行らせたのは昭和三十年代のことである。大宅氏が問題にしたのは、テレビだったが、ほとんど同じころ、昭和三十年代から四十年代にかけて、少年漫画は月刊誌時代から週刊誌時代に入り、こちらも勢いを増して時代をリードしていく。この頃、「ちゃんとした活字の本を読みなさい。漫画ばかり読んでいると馬鹿になります」と親に小言をいわれた子供は多かったはずである。〉(本書より)
 マンガばかり見ていると馬鹿になると、いいだしたのは、その時代であっただろう。それより前の時代には、そんなことはいわれなかったと思う。私の母親は(父親も)、子供の勉強にあまり関心がなかったせいか、勉強しろ!! など一度もいったことはなかった。そのせいかマンガのせいにもしなかった。それでも当時の流行した児童マンガ雑誌は買ってくれた。月刊で発売されるマンガ雑誌がたのしみで、発売日が待ち切れなくて、発売当日の前の日に隣り村の本屋へ山道を歩いていって、もしかすると、出ているかもしれないと期待していったのだが、結局は出ていなくて、ガッカリして帰ったのだった。
 〈本を読まないと「何となく馬鹿になる気がする」。大人のほうは直感的にそう感じたからこそ小言をいったのである。言われた子供のほうは自分が否定されて不愉快だから「親は頭が固い」と反発する。両者の間には深い溝がある。では、どちらが正しいのだろうか。一見、前時代的で非論理的に見える大人側の意見に一定の理がある。と私は考えている。〉(本書より)
 雑誌などのマンガに登場するマンガ家は、ひどい格好で描かれていた。ツギハギだらけの服を着てボサボサ頭でぶしょうヒゲがマンガ家であった。このような姿をマンガに登場させられては誰もが、これがマンガ家の姿と信ずるのは当たり前のことであった。実際、マンガ家は、マンガで生活していくことは不可能であった。それでもマンガ家になりたいという人たちがいたのである。その中に私もいたということであった。当時、私が親の立場であったら、モーレツに反対したであろうと思う。そういう時代である。マンガ家になりたい人の共通点は、ひたすらマンガ家になりたいのであって、それで生活するなど頭の中になかったのである。マンガが好きなだけでマンガ家になれるわけではない。運のいい人悪い人。マンガ家になれた人は、ただ運のいい人だけであったような気がする。それが世の中というものか。







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