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評者◆伊達政保
やはり音楽や芝居は観客あってのライブでなけりゃね――『風まかせ人まかせ 続・百年 風の仲間たち』と『寺山修司――過激なる疾走』の公演
No.3470 ・ 2020年11月07日




■コロナ禍でライブハウスや劇場は休業や廃業に追い込まれ、無観客ネット配信などで工夫を凝らすも、やはり音楽や芝居は観客あってのライブでなけりゃね。このままでは演劇がダメになってしまうと、演劇の街と言われる下北沢の本多グループは消毒、検温、席数半減など感染対策を整えて7月に傘下の劇場を再開していった。その劇場の一つザ・スズナリで8月に続けて二本の公演を観たのだ。
 まず新宿梁山泊の音楽劇『風まかせ人まかせ 続・百年 風の仲間たち』(作・趙博、演出・金守珍)。10年前の作品を現在の状況を踏まえ新たな設定で蘇らせたのだ。前作で趙博が歌った「百年節」を、コロナ禍における「新・百年節」と書き換え、その歌をメインテーマとした芝居だ。コロナの影響で店を閉めることになったライブハウス、その最後の日。ミュージシャンや関係者が集まってくる。当然全員がマスク、ソーシャル・ディスタンスもギャグとしても計られている。ラスト・ライブのためのリハでのフェイスシールドやビニールのパーテーション、それをも劇中劇の小道具に使うなど、なるほどこのようなやり方があったのか。圧巻はコロナ禍での鬱屈を爆発させたような、在日のマスター役の金守珍の在日・LGBT・アイヌ差別などの日本社会の矛盾に対する批判の長台詞だ。ライブのゲストとして中川五郎、三上寛などのミュージシャンが日毎に出演し、中山ラビも毎回歌を聴かせる。元梁山泊の近童弐吉が久し振りに参加しているのも嬉しい。ラストは全員参加で趙博の歌う「新・百年節」。元気が出る芝居だった。
 次は流山児★事務所公演・高取英メモリアル『寺山修司‐‐過激なる疾走』(作・高取英、音楽/J・A・シーザー、演出・流山児祥)。一昨年急逝した月蝕歌劇団・高取英の作品を盟友であった流山児が演出したのだ。また月蝕歌劇団の女優陣が出演し、まさにコラボというべきものとなっていた。この作品は寺山修司の評伝である高取の本に『盲人書簡』などの寺山の作品を挟み込み、単なる評伝劇ではなく寺山と契約するメフィストが絡み、寺山と三島由紀夫との対立軸など虚実ない混ぜの高取ワールドが全面展開する。月蝕でも3回以上の公演が行われた。
 高取の演出は役者に演技力を求めない。脚本を正しく表現することを求めていたようだ。一方で大阪人らしいお笑いの要素もある。今回は流山児★事務所の大女優伊藤弘子の寺山の母役は圧巻。月蝕の女優陣も演技力を増し、お笑いは「不連続線」の創立メンバーで最近は「水族館劇場」出演の伊藤裕作が引き受けた。月蝕の舞台が思い出され、芝居が終わった時、思わず高取の名を叫んでいた。







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