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評者◆秋竜山
物真似は楽しい、の巻
No.3471 ・ 2020年11月14日




■舶来品が流行した時代、つまりは、その当時は、舶来物というとアメリカ製品であることを意味したものであった。アア!! なつかしくもある。渋沢栄一『現代語訳 論語と算盤』(守屋淳訳、ちくま新書、本体八二〇円)では、
 〈物のわかった人々がたびたび力説している通り、わが国民の考え方には、すぐにも止めるべき悪習がある。それは外国製品の偏重という悪習だ。外国製品をむやみに除け者にする必要などないように、外国製品を偏重するあまり、国産品をダメだと感じる理由もまたないはずである。ところが舶来品といえばすべて優秀なものばかりという思い込みが、国民すべてに深く浸透しているのは、本当に嘆かざるを得ない。もっとも日本の文明が発達したのは最近の話で、しかも欧米諸国をモデルとした部分がとても多いのは事実だ。このため、かつてはヨーロッパの猿真似が流行って苦労し、今もその弊害が尾を引いていて、舶来品ばかり愛好する流れになっているのだろう。〉(本書より)
 渋沢栄一は、なげいていた。国民は喜んでいた。文句はいえなかった。日本品より外国品のほうがいいんだから。国民は、生活するなかで、いい物、悪い物は知っていた。たとえ猿真似であったとしてもだ。
 〈しかし今日は、明治維新から早や半世紀になろうとしている。しかも、東洋の盟主や世界の一等国だと自負している今の日本で、いつまでも欧米心酔の夢を見ているのだろう。いつまでも自国経蔵という見識のなさを続けるつもりなのだろう。実に意気地のない話である。〉(本書より)
 十五歳の時、浅草の露天の腕時計を父親に買ってもらった。外国物であった。田舎者には、あこがれの外国物であった。腕にはめるとすぐとまってしまった。父親は、そんなはずがない、それはお前の腕のはめかたがまずいからではないかといった。結局は、その時計はとまりっぱなしで動き出さなかった。買う時に露天商のオヤジに、「一生もちますぜ。いい買い物をしたね!!」といわれた。
 〈「外国の「レッテル」が貼ってあるから、この石鹸はよいのだ」と脅かされたり、「外国で作られたのだから、「このウイスキー」を飲まなければ、時代遅れの人間に見られてしまう」と怯えていたのでは独立国の権威と、大国の国民の器量とは、どうして保たれていくのだろう〉(本書より)
 戦後日本は特にアメリカの猿真似であったのは間違いなかろう。外国人はすべてアメリカ人と思えた。もし、あの時代にアメリカ文化が入ってこなかったら、日本はどうなっていたか。アメリカの物真似ばかりであった。子供ばかりではなく、大人達までも、アメリカであった。日本は戦争でアメリカに負けてよかった、なんていう大人達もいた。舶来品はすべてアメリカ品であった。子供の私達にとっては外国というとアメリカであった。美空ひばりがアメリカの人気子役オブライエンとかいう女優と映画で共演した。たしか、学校で映画館につれていかれて観た記憶がある。アメリカの上流家庭に対して、ひばり役の家庭もない戦争孤児であるものとの差に、考えてみれば、自分たちの姿ではないかと子供達は思ったものであった。戦後、日本は猿真似天国であった。しかし、物真似というものは活気と活力がみなぎっている。新しい物を真似るのであるから当然だろう。真似られるより真似たほうがなぜかたのしい。今、日本は、どこに物真似を求めたらいいのだろうか。アメリカか、そーじゃあないだろう。







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