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評者◆秋竜山
漫画のアイデア着想の技術、の巻
No.3474 ・ 2020年12月05日




■漫画を語る時、一般の読者には知っておいてほしいという、ややこしい(めんどくさい)ことがある。いちいち、それを語らなくてはならない(これが漫画の姿である)。劇画調とする漫画。ナンセンス(大人物)調という区別が必要となる。劇画を語るのは簡単だし、ナンセンス漫画を語るのも簡単。劇画とナンセンス物を一緒にして語るとややこしくなる。私の場合はナンセンス漫画の部類に属する。漫画というとアイデアということになる。素人でも、漫画はアイデアを考え出すのに大変ですね!? と、きかれたりする。「ハイ」と、私は素直に正直に答える。「まァ!! たいしたことはありませんよ」なんて、答えたりもしないことはないが、めんどくさいからいい加減に答える場合もある。漫画はアイデアが大変ですねぇ!! なんて、いわれると、たしかに漫画そのものはアイデアが命の場合ですらある。
 ところが、たずねるほうは「漫画」といっているが、「劇画」か「ナンセンス物」かの区別なくいうわけだ。私は劇画のアイデアの苦労は知らないから、わからない。専門はナンセンス漫画である。だから、きかれるたびに、劇画ですかナンセンス物ですかときくことになる。たずねているほうは、そんなことは、どーでもいいことであり、「漫画」といったら「劇画」にきまっているだろうと、いうことだ。
 池澤夏樹『知の仕事術』(インターナショナル新書、本体七四〇円)ではアイデアについて。もちろん小説家であるから小説についてということになる。
 〈馬上、枕上、厠上という言葉がある。文章を考えるのに最も都合がよい三つの場面を示す言葉で、ぼくの場合、「枕上」で思いつくことはよくある。明け方目が覚めたと同時に「あそこはこうすればいいのか!」と。そんなときはしばらく考える。どこまでそのアイデアが膨らむか、待ってみる。起きてメモをすることもあるが、書かなくてもほとんどの場合は忘れない。昔は枕元にメモ帳を置いていたが、そこまですることはなくなった。とはいえ、枕上で思いついたアイデアの質が必ずしもよいとは限らない。(略)最も平凡なアイデア。こんなこともあり得るわけだ。ぼくも後で見返して、なんだこれはと恥ずかしくなった経験はある。明け方などに頭が冴えて、いいアイデアが浮かぶことがないわけではないが、最もアイデアが湧くのは、実は書いているときだ。書くというのはすなわち考えることで、時間をかけて少しずつ構築していくような大きなグランドデザインであっても、書きながら考えることがほとんどだ。〉(本書より)
 漫画のアイデアを馬上とか枕上とか厠上で考えるということはあるかもしれない。しかし、馬上はおそらくあるまい。第一、馬に乗れないし、馬に乗るなどといったこともあるまい。あったとしても、落馬がせきのやまだ。いや、落馬した瞬間にパッと浮かぶことがあるかもしれない。フトンの中へもぐって考えたりしたこともあったが、失敗に終わる。眠ってしまうからである。トイレの中ということもないではないが、期待できるアイデアが浮かぶかどうかはわからない。漫画のアイデアをどのようにして浮かばせるか。この方法しかないというのは、ケント紙にしがみついているということだ。はなれたらそれまでである。しがみついてさえいれば、神も仕方ないとばかりに、ひらめきのようなものをあたえてくれる。神に、ありがとうというべきか、己の脳ミソにお礼をいうべきか。一本でき上がりとなるのである。







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