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評者◆ぱせり
対立する物語の先にあるものは何か
現代台湾文学選1 次の夜明けに――下一個天亮
徐嘉澤著、三須祐介訳
No.3477 ・ 2021年01月01日




■台湾南部の町の、ある一家(林家)三代の物語である。主に父たちと息子たちの物語だ。父に息子は反発する。反発するのは、両者があまりに似すぎているからなのだ。
 父と息子、兄と弟、中央と地方、財閥・政府と民衆、雇い主と外国人労働者、古い価値観と新しい価値観、……たくさんの対立が物語の中に出てきた。林家三代、家族の物語を語ることが、台湾という大きな家族の物語を語ることに繋がっている、と感じている。
 徹底した皇民化政策を押し付けてきた日本が去った戦後、中国国民党による強権政治を経て、民主化への道を歩んできた台湾。短い間に、政策が激しく移り変わり、その都度、人々は翻弄され、国を揺るがす大きな事件を乗り越えてきた国のありようは、林家の親子の対立の物語とよく似ていると思う。二二八事件、美麗島事件、美濃の反ダム建設運動、タイ労働者暴動事件、少年Y死亡事件、高雄LGBTパレード……大きな力、激しい流れに、飲み込まれまい、せめて踏ん張りたい。強い思いで、人々は大きく声をあげる。奮い立つ。その時代にその土地に暮らしていれば、関わらずにはいられなかったのだろう(あえて背を向けるということも、流されていくということまでも含めて)。
 林家の父たちと息子たちは互いに相手をねじ伏せようと闘うけれど、その闘いは、いつのまにか別のものに変わっていなかっただろうか。対立する物語の先にあるものは何か。作者は、三世代の親子たちの向こうに、きっと台湾をみつめている。
 この物語に登場する女たちのことも忘れられない。男たちの物語に比べると地味だけれど。延々と続くとんでもない修羅場が、長い時間のなかで、「日常」に化けていく。その日々のなかで、「ものわかりがよくて穏やかな」役回りに徹してきた女たち。この物語の女たちは、女の姿をまとっているが、たぶん、そうではないのだろう。男たちにとっての「家」の化身のように感じた。
「ほらもう少し、家はもうすぐそこだ」息子たちはもうすぐ「家」に帰る。







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