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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」④
No.3479 ・ 2021年01月16日




■それまで政権のトップに君臨していた政治家が、表舞台から降りたとたん、在任中に犯した刑事責任を問われて訴追され、じっさいに逮捕されるという事態は、ある意味よく見慣れた光景でもある。あるいはそうした追及から逃れるため、ありとあらゆる法的・人的手段に訴えて自身の身辺を守り固めようとする彼等の、見苦しい振る舞いも何ら珍しいことではない。
 今回の大統領選挙で敗北が決定的となった男は、聞くところによると、まだ自身の在任期間が残っているうちに、自分の手で自分に恩赦を与える可能性さえ検討しているという。残念なことに、権力の移動に伴うこうした醜い姿は、民主主義国と権威主義国とを問わず共通に見受けられる現象だ。
 わが国では、ほんの四か月前に政権の座を去ったばかりの総理大臣が、在任期間中にふかく関わったとされる違法行為を糾弾され、実際に刑事告発されるという事態が起きている。もし本当に指摘されているような犯罪事実があったのなら、それを解明するのは司法の役割であり、私がいまそれについて語り得ることは何もない。
 ただ、私がひとつ注視しているのは、一部でまことしやかに囁かれている陰謀論の存在である。洋の東西を問わず、また時代をもこえて、政治権力者の世界に陰謀や裏切りは、つきものの下卑た裏ネタだった。いま耳に入ってくるのは、今回の事態は現総理が前総理の政治的影響力を削ぐために、水面下で仕掛けた罠だといったものだ。
 恐らく、検察による前総理へのこうした取り調べの事実そのものを、政治利用したい勢力がいることだけは確かだろう。だが私たちが間違えてならぬのは、正義はつねにより強い権力者の掌中に握られているかのような誤解を、自分のなかで正当化しないことである。今回の事態は、前総理の“守護神”と呼ばれた男の失脚がなければたぶん起らなかった。そして彼を失脚させたのは市民による広汎なネット・デモの力が大きかった。決してそれは陰謀なんかではない。
(つづく)







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