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評者◆秋竜山
「バカにつける薬」は売れない、の巻
No.3480 ・ 2021年01月23日




■人類の悲願だった「馬鹿につける薬」が、開発にいたった。新型コロナウイルスの時もそうであったように、開発された新薬の効き目を試さなくてはいけない。誰に試すべきか。人間は誰もが馬鹿であるということから、誰でもよいわけである。とは、いうものの、そーいうわけにもいかない。そこで、この薬を発明した博士の家族のものということになった。「馬鹿にしないでよ」と、博士の女房がわめいた。だからといって博士本人というわけにもいかず、我が子ということになった。馬鹿につける薬を身体のどの部分につけるのか問題でもあったが、馬鹿に一番関係ある部分ということで頭ということになった。その結果、大成功であった。全世界にニュースで流れ、世界中の薬局の店頭に並べられた。
 ここで思いもよらない事態が発生した。薬を誰が買いにくるかということであった。「馬鹿につける薬をください」。すると店員がその客にむかって「どちらさまが御使用になるんで?」と聞く。これが、人間のいやらしさである。よくあることで、薬局で、知られたくないことで薬を求める場合、薬局としても聞いてもいけないことでもある。誰が使おうと大きなお世話であると思うのであるが、馬鹿につけることは間違いないことでもある。その馬鹿は誰か。そんな時、「エェ、まあ、たのまれまして……」などと、いうものである。「うちの亭主が……」と、いったとしても誰も馬鹿であることはわかっているから問題はないとしても、「あそこの家の主人が馬鹿につける薬を買ったわよ」などと、そのうわさが怖い。亭主が駄目なら子供という手もあるが、余計にうわさが怖い。結局は「もー、いいです」と、いって買わずに帰ってしまうことになる。このことを主人に話すと、「馬鹿、よけいなことするな〓」と、叱られるはめになるのである。かくして、世界中の薬局に並べられた「馬鹿につける薬」は一つも売れなかったことになるのであった。
 和田秀樹『バカの人――その傾向と対策』(ゴマブックス、本体一二〇〇円)では〈和田式バカな!〉が述べられている。
 〈バカにならない。語意――一見たやすそうに見えるが、無視したり、軽視できない。バカにできないこと。〈和田式解釈〉「バカ律儀」「バカ丁寧」「バカ正直」は、無駄な仕事に情熱を傾ける「安直バカ」を表現するのにピッタリの、3バカ用語です。(略)彼らは手あかのついた役に立たない「努力の結果」を握りしめて、「自分は、要領が悪くてバカを見ている」と自嘲しつつ、こぼします。そして、クオリティの高い仕事を速くあげるエリートたちに、「要領のいいやつめ」と恨みの目を向けます。そのうえ、自分のやり方を改善しようとしない。「おまえを雇っている給料も、無駄な仕事に使う経費も、バカにならないんだぞ…」きっと、経営者の方も、こう叫びたいではないでしょうか?〉(本書より)
 馬鹿は死ななきゃなおらない、死ねば仏のじゃまになる。とは、浪曲の名文句である。みんな、笑いながらその浪曲をきいた。馬鹿が馬鹿を笑うのである。
 〈また、一番やっかいなのは、自分が「バカ」だという場合です。(略)それは「自覚」です。「自覚」さえできていれば、治す手段はいくらでもあるのです。〉(本書より)
 バカとハサミは使いよう、ともいう。







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